Awesome City Club×CAMPFIRE・石田光平対談 メジャーバンドがクラウドファンディングを使う意義とは?

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「みんな“素”を出せるようになったし、メンバー間の会話も増えた」(PORIN)

――ACCに関しては、デビュー前からの戦略的な動き方を含め、かなりプロモーションすることに自覚的なバンドだというイメージがあります。2ndアルバムをリリースするいま、価値観はどう変わっていますか?

atagi:4月に1stアルバム『Awesome City Tracks』をリリースしたことで、メンバー全員の肩の力がすごく抜けました。今までは先が見えなくて不安だったから、どうしても「尖ってなきゃいけないし、話すことも斬新じゃなきゃいけない」と思ってたんですよね。そういう意味では、煩悩がなくなったというか……。

――肩肘を張らず、自然体で取り組めるようになりましたか。

atagi:はい、その結果として全員が「良い音楽とは何か」という禅問答にぶつかるようになりました(笑)。もちろん、今も答えは見つかっていないですが、人から「良い音楽だね」と言われるのはすごく嬉しいですし、そのように思われたいという欲求は実際あります。いまは2ndアルバムの制作を終えて、音楽に対して真面目な態度の自分と、どうせやるなら面白楽しくやりたいという態度の自分が混在しています。今回のクラウドファンディングに関しては、後者の自分が顔を出したというか。

PORIN:当初のACCにあった、ガチガチに決められていたコンセプト感は段々無くなってきていて、人間味溢れるバンドになってきたと思います……(笑)。どんどんみんな“素”を出せるようになったし、メンバー間の会話も増えました。atagiくんも言っていますが、良い音楽を作ることと、自分たちが楽しむことに集中できているんです。内面から変わっていっているというか。

atagi:結局はバランス感覚で、どちらかだけやっていれば済むという訳ではないんですよね。音楽をやっていくことも、自分たちがどのように見てもらいたいのか考えることも好きなのは変わらずに、いまは音楽側に重心が傾いているといえます。

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――支援する側として、石田さんが感じる「良い音楽」ってどういうものなのでしょう。

石田:「売れる音楽」だと思います。「売れるもの=良いもの」と考えたときに、何が良かったから売れたのかという要因は、音が良いとか、マーケティングが良いとか、コンセプトが良いとか、一つじゃない。特に今の時代は色んな要素を含んでいるのではないでしょうか。

――ちなみに、石田さんは音楽業界のプロモーションについてどう感じているのでしょうか。

石田:一番勿体ないと感じるのは、Twitterで気になって、プロフィールからHPに飛んだけど、重くて見れないとか、デザインに凝りすぎて表示が遅いとか。まずは良い曲があることが大切ですが、インターネットに関してはその先にあるものもまた重要視されると考えています。それと、僕はファンにもグラデーションのようなものがあると思っていて。ライブハウスにも足繁く通い、音源も毎回買ってくれるような“濃い”ファンと、興味をもてばライブに来てくれるくらいの“薄い”ファンがいる。全員に対して均一なものを投げかけるのではなく、そのグラデーションに合うようなプロモーションをすれば、もっと面白くなるのではないでしょうか。ファンのなかにも、自分の好みのアーティストにもっと関わりたくてお金を出す人もいれば、そうでない人もいるわけなので、それぞれに合ったやり方の必要性を感じています。濃いファンばかり集めれば経済的には問題ないと思いますが、それだけじゃ上手く行かないから難しいですよね。

――ACCは濃いファンに向けたプロモーションが多いイメージです。インディー時代にまったく音源をリリースしないという施策も含めて。

石田:すごい。故意的にそうしたんですか?

atagi:何となく、勿体ぶっていればジワジワと熱も高まるだろうと思って。

石田:なるほど。そうやって飢餓感を煽ったんですね。

PORIN:あと、きちんとした環境で音源を作ってから広めたいという気持ちもありました。

石田:音源を安易に出してしまうことで、自分たちの力を出し切っていない作品を世に広めて、それがマイナスに働くという恐れがあったと。

atagi:そうなったら嫌だなと思って。結成当初の環境下では、音質を突き詰めることもできませんでしたから……。あと、グラデーションの薄い部分のファンを増やすという話は面白いですね。

石田:濃いファンより、薄いファンを増やすことの方が難しいと思います。僕はアイドルが好きなのですが、彼女たちはまず視覚でパッとわかるから、比較的軽いファンも付きやすいですよね。バンドだと、アーティスト写真とかMVがその役割を果たすのかも。

PORIN:ACCは、結成当初からアーティスト写真に強い思い入れがあって。知らない人の目にまず映るのがそこだと思っているので、かなり突き詰めたものを作り続けています。

atagi:音楽的なところでいうと、自分の趣味が1、2年で変わってしまうので、特定のジャンルに対する固執はないんですよね。良い曲が作れればそれでいいというか。

――その“良い”かどうかの判断基準は?

atagi:メロディーが良いかどうか、あとはその良いメロディーに言葉がしっかり嵌まっているかどうかですね。この核に関しては、自分が音楽を作り始めてからずっと変わっていないと思います。

石田:ちなみに、メジャーデビュー前と後ではどういう変化があったのでしょうか。

atagi:根っこの基本的な部分は変わってなくて、それぞれの場所に適しているかどうかなんだと思います。お茶の間に受け入れられたいと思うアーティストにはメジャーが向いているし、“分かる人にだけ理解されれば”と考えているのならインディーのほうが適正はあるのかなと考えています。

PORIN:私の場合は、メジャーデビューしたことで「これで一生ご飯を食べて行こう」という覚悟が決まりましたね。自分のやりたいことをやって、お金が発生してそれを受け取る、という経験は初めてだったので。もちろん、色んな人が関わってくれることによって、自分にも責任感が増してきたというのもあります。

atagi:確かに、インディーのままだったらまだ青しけたことを言っていたかも。そういうプロ意識というか、マインドの部分での差は出るかもしれないですね。

石田:なるほど。あと、クラウドファンディングを利用して、どれくらい新しい人たちに知ってもらえたと感じていますか?

atagi:クラウドファンディングを利用してシングルCDをリリースしますと発表したこと自体がニュースになったりして、プロモーションの役目を果たしたと思います。ただ、それでどれくらいの人にまで伝わったのかということは分かりませんが、SNSでも色んな方からの反応が目立ったので、ある程度広まった実感はあります。

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