長渕剛の富士山麓ライブはいかにして“伝説”となったかーー入場から朝日が昇るまでを徹底レポート

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photo by 辻徹也

“静”と“動”で魅了した<2部>

 日米混合バンドがもたらした影響は大きい。フォーク・ロックの印象が強かった長渕楽曲だが、重厚なバンドサウンドに支えられた、トラディショナルなアメリカン・ロックへと変貌した。その代表ともいえるのが「とんぼ」だろう。歌い出すまで何の曲か解らない。それは決して懐古で終わらせない進化を求める形でもあり、何より、バックバンドではない、“一つのバンド”であることの証明でもある。二回の全国ツアーを重ね、バンドはより強靭なものになったのだ。(参考記事:長渕剛のライブには何が込められているのか 富士山麓「10万人オールナイト」への前哨戦レポ http://realsound.jp/2015/04/post-2977.html

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photo by 辻徹也

 木魚に合わせた巧みな言葉遊びによる独特な和製リズムが印象的な「三羽ガラス」だが、ホワイト・ブルース調にリアレンジされている。Ichiro、ピーター・ソーン、2人のギタリストがむせび泣くブルージーなギターがたまらない。今回、久々に歌われる楽曲も多かったが、オフィシャルサイトでは『富士で聞きたいあの名曲!緊急ファン投票!』が事前に行われていた。それとは別に、この日に携わるスタッフによるリクエスト投票も行われていたという。

 長渕にとって初のテレビレギュラー番組『ブチまけろ!炎の魂 - 長渕炎陣 -』(BSフジ)にも登場していた沖縄出身の女性シンガー・ソングライター、Maikoが呼び込まれる。「てぃんさぐぬ花」で美声を響かせ、続いて剛ファンにはお馴染みの般若と、同じく『長渕炎陣』での異端っぷりが話題になった、輪入道という2人のラッパーが登場。政治メッセージ色の強いリリックには賛否両論あるかとは思うが、この異色なコラボレーションによる「家族」は、唯一無二の混沌としたカオスティックな世界観の音楽を轟かせていた。

 東日本大震災の被災地であり、原発事故に見舞われた、福島県浪江町の情景を綴った「カモメ」、震災によって忘れかけていた大切なモノを気付かせてくれた「ひとつ」。そこからの「しあわせになろうよ」大合唱の流れは、10万人の心がまさにひとつになった瞬間だった。

 上京者にとってはたまらない「東京青春朝焼物語」、燃えたぎるような「桜島 SAKURAJIMA」で、会場のボルテージが最高潮に達するのを表すかのように、特効とLEDビジョンに映し出される炎が会場全体を真っ赤に染め上げる。冷めやらぬ興奮状態を抑えるかのように「メニューにはない曲」ということで「巡恋歌」をギター1本で熱唱し、2部は終了した。

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