SMAPの『のど自慢』出演は“音楽番組”の転換点となる? 5人の到達した境地を読み解く

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(C)タナカケンイチ

 SMAPが8月30日放送の『NHKのど自慢』(NHK系)に出演し、“番組開始70年”の節目を盛り上げた。

 同番組は1946年1月の放送開始以来、長きに渡って放送されている公開視聴者参加の生オケ番組。今年は70周年に向け「ありがとう。これからも」をキャッチフレーズに、さまざまな特別応援企画を展開している。

 著書に『紅白歌合戦と日本人』や『中居正広という生き方』を持ち、ジャニーズとテレビ史に詳しい社会学者の太田省一氏は、『NHKのど自慢』とSMAPの歴史について『紅白歌合戦』を絡めながらこう語る。

「『NHKのど自慢』は『紅白歌合戦』とともに、敗戦直後の日本において“復興”をテーマに企画されていた番組で、それぞれが民主主義の新しい時代を象徴していました。また、『NHKのど自慢』は、これまで『素人の歌っている歌声が放送に乗ることがタブー』とされていたそれまでの常識の逆を行き、歌番組のあり方を変えたという功績もあります。これまでSMAPは『NHKのど自慢』というより『紅白歌合戦』と関わりが深く、90年代半ばから本格的にブレイクを果たした彼らは、2003年に「世界に一つだけの花」で、初めてグループ歌手としてトリを飾り、それまで“ソロ歌手がトリを飾る”とされていた紅白の不文律を崩しました。また、1997年には中居正広が史上最年少での白組司会も務めるなど、進行役としても関わっていたことも記憶に新しいですね。音楽番組の歴史を変えた番組とアーティストがコラボレーションすることに、強い意義を感じます」

 そんなSMAPがこのタイミングで『NHKのど自慢』に出演したことに、音楽番組が陥っている不況を脱出するヒントが隠れているという。

「『紅白歌合戦』は毎年高視聴率を残す番組ですが、近年は全体的に歌番組の視聴率が下火になっています。各局が『歌をどういう風に提供すれば歌番組に注目してくれるのか』という課題を模索していますが、今回SMAPが出演した『NHKのど自慢』には、その問題を解決するヒントが隠されているように思います。まず、彼らは特別ゲストという仰々しい感じではなく、遊びに来たようなフレンドリーさで登場し、普段通りの絡みを見せることで会場の出場者や観客にもすんなり溶け込み、そこにSMAPの親しみやすいスター性を感じさせました。番組の雰囲気に近い“みんなが手と手を取り合う。一つになる”というテーマを、グループがもとより体現していたことも大きいのではないでしょうか」

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