ポルノグラフィティが最新作で挑んだ“らしさ”と“新しさ”――「オー!リバル」等から検証

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 ポルノグラフィティが約3年5か月ぶりとなるニューアルバム『RHINOCEROS』をリリースした。エッジの効いたロックサウンドとともに他者との殺伐とした関係性を描いた攻撃的なナンバー「ANGRY BIRD」、カントリーミュージックのテイストを取り入れた「Hey Mama」、エモ〜ヘビィロックの流れを汲んだ「バベルの風」など、幅広いタイプの楽曲が取り揃えられた本作、その起点となったのが、シングル曲「オー!リバル」だ。

 映画『名探偵コナン 業火の向日葵』の主題歌として制作された「オー!リバル」は、スパニッシュ風のギター、憂いと開放感を共存させたメロディが印象的なナンバー。ポルノグラフィティの代表曲である「サウダージ」(2000年)「アゲハ蝶」(2001年)などの系譜に連なる、ラテン・テイストを軸にした楽曲だ。作曲は岡野昭仁。「サウダージ」「アゲハ蝶」はak.homma(本間昭光)の作曲だが、おそらく岡野は自らの手で“ポルノグラフィティのパブリックイメージに沿った、新たな代表曲”を作り出そうとしたのかもしれない。

 デビュー当初から本間昭光氏がプロデューサーとして関わり「アポロ」「ミュージック・アワー」「ハネウマライダー」などのヒット曲を生み出してきた彼ら。岡野のボーカル、新藤晴一の作詞・ギターを活かしながら、本間氏のプロデュースワークのもと、ロックテイストのJ-POPというスタイルを確立してきた。そう考えると、岡野が自らラテン・テイストの楽曲に挑んだことはとても大きな意味があると思う。

 前作『PANORAMA PORNO』(2012年)以降の音楽シーンの変化が、彼らの音楽観に何かしらの影響を与えていることも想像に難くない。この3年半の間に(実際は10年くらい前からだが)、日本のメジャーシーンはアイドルソング、アニソンの優位が決定的になったと言っていい。クラムボン・ミト氏の「楽曲の強度を上げないと戦えない」という発言に示されているように、音楽をビジネスとして考える以上、楽曲自体のスペックを上げることは必要不可欠。だからこそ岡野と新藤は、「オー!リバル」をコアなファン以外のリスナーに届く楽曲として成立させようとしたのではないか。実際、「オー!リバル」にはEDMの要素なども取り入れられるなど、現在のシーンに適応したサウンドメイクが施されていて、“らしさ”と“新しさ”がバランスよく共存する楽曲に仕上がっていると思う。また、Perfume、flumpool、BEGIN、高橋優、WEAVERなども出演した大型イベント「Amuse Fes 2015 BBQ in つま恋」でもポルノグラフィティは、自らのステージの本編ラストで「オー!リバル」を披露。そこにも、この曲にかける彼らの思いが示されているはずだ。

ポルノグラフィティ 『オー!リバル(Short Ver.)』

 アルバム『RHINOCEROS』を通して新たな代表曲を作るという意思は、リードトラック「Ohhh!!! HANABI」にも共通している。わかりやすい夏のモチーフである“花火”をテーマにした「Ohhh!!! HANABI」の特徴は、徹底してポップに振り切っていることだろう。もちろんここには、作曲者の岡野の“いまのポルノグラフィティには、より間口の広いポップチューンが必要だ”という冷静な判断が反映されているのだと思う。新藤の作詞においてもキャッチーな言葉が並び、ファンがタオルを振り回したりライブでの弾けっぷりも想像できる。また、エッジの効いたギターサウンドとトロピカルなビートを融合させたアレンジは、シライシ紗トリの手によるもの。SMAP、嵐、乃木坂46などの楽曲を手掛けてきたヒットメイカーとのコラボレーションによって彼らは、この曲に現代的なポップ感を与えることに成功している。

 コアなファンとの安定した関係だけに留まらず、現在のシーンに対応することで新たなリスナーを獲得すべく、より開かれたポップネスへと舵を切ったポルノグラフィティ。本作『RHINOCEROS』は彼らのキャリアにとっても、ひとつの分岐点になりそうだ。

(文=森朋之)

■リリース情報
『RHINOCEROS』
発売:2015年8月19日
【初回生産限定盤(CD+DVD)】 ¥3900(税込)
《DISC 1》
ANGRY BIRD
オー!リバル
Ohhh!!! HANABI
wataridori
Hey Mama
俺たちのセレブレーション
Stand Alone
ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~
ソーシャル ESCAPE
バベルの風
AGAIN
Good luck to you
螺旋
ミステーロ

《DISC 2》
Ohhh!!! HANABI <Video Clip>
俺たちのセレブレーション <Video Clip>
ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~ <Video Clip>
オー!リバル <Video Clip>

【通常盤(CD)】 ¥3200(税込)
《DISC 1》
ANGRY BIRD
オー!リバル
Ohhh!!! HANABI
wataridori
Hey Mama
俺たちのセレブレーション
Stand Alone
ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~
ソーシャル ESCAPE
バベルの風
AGAIN
Good luck to you
螺旋
ミステーロ

■ライブ情報
「14thライヴサーキット “The dice are cast” 」
9月3日(木) よこすか芸術劇場(神奈川県)
9月5日(土) 富士市文化会館ロゼシアター 大ホール(静岡県)
9月6日(日) アクトシティ浜松 大ホール(静岡県)
9月9日(水) 市川市文化会館 大ホール(千葉県)
9月12日(土) 福岡サンパレスホテル&ホール(福岡県)
9月13日(日) 福岡サンパレスホテル&ホール(福岡県)
9月15日(火) 市民会館崇城大学ホール(熊本市民会館)(熊本県)
9月16日(水) 都城市総合文化ホール(宮崎県)
9月19日(土) 沖縄コンベンション劇場(沖縄県)
9月24日(木) 大宮ソニックシティ 大ホール(埼玉県)
9月28日(月) フェスティバルホール(大阪府)
9月29日(火) フェスティバルホール(大阪府)
10月2日(金) びわ湖ホール 大ホール(滋賀県)
10月4日(日) なら100年会館 大ホール(奈良県)
10月6日(火) アルファあなぶきホール 大ホール(香川県)
10月8日(木) 長良川国際会議場 メインホール(岐阜県)
10月9日(金) 三重県文化会館 大ホール(三重県)
10月12日(月・祝) とりぎん文化会館 梨花ホール(鳥取県)
10月15日(木) 名古屋国際会議場センチュリーホール(愛知県)
10月16日(金) 名古屋国際会議場センチュリーホール(愛知県)
10月18日(日) 高山市民文化会館 大ホール(岐阜県)
10月23日(金) 日本武道館(東京都)
10月24日(土) 日本武道館(東京都)
10月27日(火) 仙台サンプラザホール(宮城県)
10月28日(水) 仙台サンプラザホール(宮城県)
10月30日(金) 八戸市公会堂 大ホール(青森県)
11月3日(火・祝) 旭川市民文化会館 大ホール(北海道)
11月5日(木) ニトリ文化ホール(北海道)
11月6日(金) ニトリ文化ホール(北海道)
11月9日(月) 上田市交流文化芸術センター 大ホール(長野県)
11月11日(水) 本多の森ホール(石川県)
11月12日(木) 本多の森ホール(石川県)
11月15日(日) 広島文化学園 HBGホール(広島県)
11月16日(月) 広島文化学園 HBGホール(広島県)
11月18日(水) 松山市民会館 大ホール(愛媛県)
11月19日(木) 高知県立県民文化ホール オレンジホール(高知県)
11月23日(月・祝) 福島県文化センター 大ホール(福島県)
《追加公演》
12月15日(火)横浜アリーナ(神奈川県)
12月16日(水)横浜アリーナ(神奈川県)
12月21日(月)大阪城ホール(大阪府)
12月22日(火)大阪城ホール(大阪府)

「14thライヴサーキット “The dice are cast”」特設サイト
http://sp.pornograffitti.jp/thedicearecast/

http://www.pornograffitti.jp/index.php

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