Juice=Juiceの過去・現在・未来が凝縮! 初アルバム『First Squeeze!』をピロスエが徹底レビュー

タイプ4:中島卓偉

03. 愛・愛・傘[作詞・作曲:中島卓偉 編曲:大久保薫]

 今年に入ってからアンジュルム「大器晩成」、℃-ute「次の角を曲がれ」とハロプログループへの楽曲提供が相次いでいる中島卓偉。LoVendoЯ「いいんじゃない?」に続き、J=Jへも2曲の楽曲を提供している。

 こちらの「愛・愛・傘」はスウェディッシュ・ポップ調の、しっとりと落ち着きつつもビート感は保ったナンバー。2番冒頭などではボサノバ風な展開も見られる。ライブではスタンドマイクで歌われ、両手を使った振り付けがチャームポイント。

 編曲の大久保薫は、先述の平田祥一郎と同じくハロプロ楽曲のメインアレンジャーのひとり。J=J曲を手がけるのは「イジワルしないで 抱きしめてよ」以来2回目となる。

Juice=Juice「愛・愛・傘」(43:12〜)

07. GIRLS BE AMBITIOUS[作詞・作曲:中島卓偉 編曲:中島卓偉、宮永治郎]

 もう一方の「GIRLS BE AMBITIOUS」は、中島の本流ともいえるロックンロール曲。跳ねるビートは否が応でも盛り上がる。歌詞はパッと聴く分には女の子の様々な心情を綴ったあるあるネタだが、実はよく聴くとJ=Jメンバー5人それぞれのパーソナリティを入れ込んだ当て書きにもなっている。「あざかわ(あざとい+可愛い)」「色気」「ショートカット」「天然」「ダイエット」など、ファンが聴けばすぐに合点がゆくはずだ。これはJ=Jスタッフからの情報を元に中島が書き上げたもの、とのこと。

 編曲で共同でクレジットされている宮永治郎は、過去のハロプロ楽曲でいうとメロン記念日「お願い魅惑のターゲット」、Buono!「初恋サイダー」どちらも編曲を手がけていたり、最近ではLoVendoЯのほぼ全曲のアレンジに関わっている人物。ロックチューンである本曲にはぴったりの人選だろう。ここではギター、ベース、プログラミングを担当。

 コーラスは中島本人が担当しているのだが、そのレコーディングの模様はウェブ番組「MUSIC+」でオンエアされている。同番組では、今年1月からアンジュルム「大器晩成」のレコーディングやトラックダウンなどのメイキング映像を放送し始めて、好評を得て現在までコーナーが続いている。「GREEN ROOM」も同様だが、楽曲制作やライブ制作の裏側を積極的に見せていく手法は現在のハロプロの特徴のひとつ。

Juice=Juice「GIRLS BE AMBITIOUS」レコーディング映像#01(中島卓偉コーラス編)(34:03〜)

タイプ5:角田崇徳/KOJI oba

10. 未来へ、さあ走り出せ![作詞:角田崇徳 作曲・編曲:KOJI oba]

 「続いていくSTORY」と共にアルバム終盤を飾るこの曲は、オーガニックな響きとエレクトロなビートが融合したポジティブなサウンド。そして現在展開中のツアーのタイトル「Begin to Run」ともリンクした曲名通りの、グループの未来を指し示した希望あふれるリリックが耳に心に眩しい。サビのフレーズには「次の時代が始まる 行くぜ!私たちの未来! Juice=Juice!!!」とグループ名が入れ込まれていることもあり、これも今後の代表曲になっていくのではないだろうか。

 (グループ名が歌詞に入っているハロプロ楽曲といえば、モーニング娘。「本気で熱いテーマソング」、Berryz工房「Berryz工房行進曲」、℃-ute「JUMP」などが思い出されるが、それらの系譜に連なる一曲ともいえる)

 作詞の角田崇徳は、ピーベリー「キャベツ白書」、ジュリン「ほたる祭りの日」、チャオ ベッラ チンクエッティ「二子玉川」(いずれも作詞・作曲)などを過去に担当。いずれも情緒ある曲ばかりだ。作曲・編曲のKOJI oba(大場康司)は、HANGRY & ANGRY-f「レコンキスタ」(作曲)でアップフロントとの関わりは以前からあるが、ももいろクローバー「走れ!」(michitomoと共同作曲)、RYUTist「ラリリレル」(作曲・編曲)といった楽曲が有名だろう。

 以上9曲に既発表シングル2曲を加えた全11曲。楽曲そのものの良さもさることながら、その良さを実現させているのはもちろんJuice=Juiceのメンバー5人の力である。歌唱力という面から見れば高木紗友希が突出しているが、J=Jが恐ろしいのは、他のメンバーも成長著しいところにある。

 デビュー当初は宮本佳林と高木の2トップ、金澤朋子の艶っぽく魅力ある歌声、そして宮崎由加と植村あかりがそれに続くという体制だったが、ライブハウスツアーをやり通しての研鑽、ミュージカル『恋するハローキティ』での経験、ボイストレーナー菅井英斗先生によるボイトレなどを経て、5人全員が歌えるボーカルグループになりつつあるのが現在のJuice=Juiceである。アルバム新曲はその証左にもなっている。

 個人的にお勧め曲を挙げると、全部粒ぞろいなのだが、強いていえば「チクタク 私の旬」「愛のダイビング」「生まれたてのBaby Love」「愛・愛・傘」で、さらに一曲に絞ると「生まれたてのBaby Love」だろうか。

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