>  > ベボベ小出×玉井健二が語る音楽シーン

「それって、for 誰?」 part.1 リリース特別対談(後編)

「ここから先は音楽を作る人が客を選ぶべき」 Base Ball Bear小出祐介×玉井健二が語る、シーンと作り手の変化

関連タグ
Base Ball Bear
JPOP
ROCK
バンド
プロデューサー
作家
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
20150714-bbb4.jpg

 ニューシングル「それって、for 誰?」 part.1をリリースしたBase Ball Bear小出祐介、そしてそのプロデュースを手掛けたagehasprings代表・玉井健二による対談。二人の出会いから今回の楽曲制作の裏側までを語ってもらった前編に続き、後編では二人が見る今の音楽シーンについて、語ってもらった。

 3ヶ月連続でリリースされるCD+CD=2Discの“エクストリーム・シングル”第一弾として発売された本作。公式サイトの告知には「音楽をストリーミングで聴くのが当たり前の時代がくるかもしれない現在…CDシングルは、ついにここまできた!」という文面もある。

 音楽の聴かれ方が大きく変わりゆく現状を、二人は作り手としてどう捉えているのか。非常に興味深い話を聞くことができた。

「みんながスマホに映える音楽を作るようになるんじゃないか」(小出)

――お二人にはこの先の音楽シーン、ロックやJ-POPのカルチャーがどう変わっていくかということについてのお話も聞きたいと思っています。特に今はApple MusicやLINE MUSICやAWAが始まって、日本でもストリーミング配信で音楽が聴かれるような時代になっていくと言われている。作り手として、お二人はどう感じてらっしゃるんでしょうか。

小出:まず僕としては、ユーザーがどういう風に音楽を聴くかっていうのは、利便性の問題だと思うんですよ。それに、お客さんがどういうデバイスでどう聴くかというのは、こちらから啓蒙していくのも何か違うと思うし、それはどうこうできるものではないと思っているんですけど、ただ、作り手としては一つ危惧していることがあって。

――どういう危惧でしょう?

小出:今はCDがあるので、PCに取り込んだりして、家ではスピーカーで聴くのが一般的だと思うんです。でも、音楽ストリーミングが普及して、お気に入りのプレイリストがスマホの中に入っていたりして、「スマホでいいや」と、いよいよスマホで聴くのがメインになっちゃった場合、そこに合わせた音楽作りが盛んになっちゃうんじゃないかと思っているんです。例えば、YouTubeが出てきたときに、YouTube映えするPVをみんなが作ったように、スマホに映える音楽を作るようになるんじゃないか、という。

――スマホに映える音楽というと?

小出:もしも、ロックバンドがスマホのスピーカーに合わせた音作りをするとしたら、バンドらしさ、人間がやっている生々しさからは、どうしても離れていくと思うんですよ。今回も、レコーディングの時にギターのチューニングにすごく気をつかったんですね。コード感にシビアになって、何回もリテイクしてやり直したりした。そもそもギターの弦の音程をぴったり合わせたとしても、指で押さえた瞬間、微妙にピッチは狂うものなんですね。しかもそれが2人いて、ベースもドラムもいる。そういう曖昧な音が固まっているのがロックバンドの生サウンドなんですよ。一方、例えば、きゃりーぱみゅぱみゅさんのように、基本的に打ち込みで作られてるポップスは、全部の楽器の音を完璧に揃った音程で鳴らすことができるわけなんです。

――シンセやコンピュータを使えばそうなりますよね。ぴったり音程が揃う。

小出:そういう音が塊になったときのほうが圧倒的に強いんです。束感がまとまってる。だから、聴き比べた時に、バンドサウンドは音が散漫だなぁとか感じたりしてしまう。そういう意味で、スマホのスピーカーで音楽を聴くことが一般的になったら、生バンドにとっては不利だと思うんです。で、そこに対応するためにみんなが聴こえやすく音を処理していったら、いよいよ無個性になる。みんな同じようになって面白くなくなっていってしまうと思うんですよ。

――なるほど。音質の面での不安がある。

小出:あとは、CDすらも買わなくなって、みんながApple MusicとかLINE MUSICとかで聴いていった場合、月額っていう括りだけで幅広く聴けるようになるわけですよね。そうすると、自分のプレイリストが自分の持ってる音楽体系になっていっちゃう。今はCDラックにCDを持ってるわけだけれど、今後、アルバムの枠も、シングルの枠も、アーティストの枠ですら取り払われて、プレイリストだけになった時に、果たして人は何に心酔していくのかなって思ったりしますね。そうなると、逆説的かもしれないですが、アーティストが何を思ってどういう表現に至ったのかが重要になっていくんじゃないかなとも思います。その人でしか得られないものが欲しい、と。今は過渡期だから、みんな同じような作り方をして、同じようなサウンドになっちゃうかもしれない。でも、その先にはその人のやっていることがどういう意味や大義を持っているのかというところに、人は心酔していくんじゃないかと。だから言葉もすごく重要になると思います。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版