POLYSICSハヤシが語る、ウルトラ怪獣への偏愛「オレが曲にしないとな、という使命感はあった」

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 POLYSICSが、7月8日にミニアルバム『HEN 愛 LET'S GO! 2 ~ウルトラ怪獣総進撃~』をリリースする。今作は、円谷プロ全面協力で制作され、怪獣の鳴き声をサンプリングした楽曲や、限定盤特典のPOLYSICSカラー(オレンジ)・ゴモラフィギュアなど、総勢9体のウルトラ怪獣に対するPOLYSICSリーダー・ハヤシの“偏愛”が込められたコラボレーション作品である。前作『HEN 愛 LET'S GO!』では、ハヤシの愛する「ドクターペッパー」や「固ゆでたまご」をテーマにした楽曲が揃い、異色ともいえるリリースが続いている。彼らは、どのような想いからこれらのリリースに至ったのだろうか。ハヤシと親交の深い小野島大氏をインタビュアーに迎え、存分に語ってもらった。

「……やっぱ、オレが好きなものをみんなにオススメしたいもん」

——今作『HEN 愛 LET'S GO! 2 〜ウルトラ怪獣総進撃〜』は、音楽的には今までで一番すごいと思いました。

ハヤシ:(ニヤリと笑って)そう言ってもらえるとうれしいですねえ。

——一番ぶっ飛んでるアルバム。

ハヤシ:そういうものにしたかったんです。ありがトイス!(笑)。

——まずは前作『HEN 愛 LET'S GO!』パート1(食べ物編)からの流れについてお聞きします。なぜこういうシリーズを作ろうと思ったんですか。

ハヤシ:もともと普通の新作を作ってたんですけど、もうひとつフックのある、パンチの効いたもののほうが面白いよねって話をしてて。自分たちもちょっと濃いものを作りたいなって時期でもあったんですよ。自分たちにしかできないものを意識してた。そこで、ハヤシといえばなんだろう、みたいな(笑)。オレが声を大にして、自信をもって語れるものってなんだろうって考えてたら、怪獣のアイディアが出てきたんです(笑)。ウルトラ怪獣で1枚作るのはいいかもね、と。でもそこでもうひとフックほしいとなって話してるうちに、オレの食べ物の好みが偏ってるのが面白いんじゃないかってなったんです。それでまず食べ物で1枚作って、それから怪獣ものを作ろうと。

——ハヤシ君のキャラクターを前面に出したものを作ろうと。

ハヤシ:そうです。まさに。

——そこでコンセプトの立て方はいろいろあると思うんですよね。ストーリー仕立てのものにする手もある。

ハヤシ:あんまそういうのは興味ないっていうのはある。それより自分の偏った部分がわかりやすく、かつ濃く伝わるもの、と考えたときに、食べ物と怪獣がハマったっていう。

——初めてハヤシ君に取材したとき(1999年、『1st P』発売時)、歌詞で何か言いたいことありますかって聞いたら、「一切ありません」って答えてたでしょ。

ハヤシ:(笑)そうそう。

——それから16年間、一切ぶれずにここまで来てるわけなんだけど……。

ハヤシ:はははは!

——今回の食べ物や怪獣というテーマも、まあ言ってみればどうでもいいことで(笑)。「言いたいことは何もない」ってことを突き詰めると、今作のようになるのかと思いました。

ハヤシ:ははははは! 今までオレって、響きだけで歌詞を書いてきた人間じゃない? 響きがよければ意味なんてなくてもいい、というのが、ひとつの自分たちのメッセージだったからね。

——今までポリシックスはサウンド上のコンセプトはしっかり考えてきた印象がありますけど、今回は歌詞のテーマを決めて制作に臨んだということですよね。歌詞でテーマ設定したのって初めてじゃないですか。

ハヤシ:ああ、そうだね。初めて初めて。

——怪獣や食べ物のこととはいえ、「言いたいこと」が出てきたと?

ハヤシ:歌詞に意味なんてなくていいっていう考えは今も変わらないけど、でも『HEN 愛 LET'S GO!』という作品を作るにあたっては、自分の偏愛ぶりを言葉で伝えなきゃいけないからそれだけじゃダメで。

——だから今回歌詞にテーマを設定して書いたと。

ハヤシ:そう。それで、今まで味わったことのない難しさがありましたね。

——というと?

ハヤシ:今まで音楽以外の、自分のコアな部分をテーマに作品を作ったことってなかったわけですよ。なのでそこで歌詞を書く時には、必然的に今までと違うものにしたい。これまでとは違うアプローチにしなきゃいけない。そこでゴモラとかドクターペッパーとか、偏愛の対象をわかりやすく説明するだけじゃ面白くない。自分の偏愛ぶりが伝わるような歌詞にしなきゃいけない。ゴモラは強くてでっかい、だけじゃなくて、自分なりのゴモラの好きなポイントを歌詞に乗せて伝えなきゃいけないと思ったの。

——なぜ「伝えなきゃいけない」んですか?

ハヤシ:……やっぱ、オレが好きなものをみんなにオススメしたいもん(笑)。いいでしょこれ?っていう。ドクターペッパーだってみんな無視するけど、ウマいでしょ?って。

——ああ、つまり、昔から「DEVOは最高だからみんな聴け!」と言ってるのと同じってことですか? オレはDEVOが大好きだからポリのファンの子はみんな聴いてよ!ってずーっと言い続けてきたのと同じベクトルで今回ドクターペッパーやゴモラを歌ってるってこと?

ハヤシ:ああっ!そうかも!

——(笑)ほんとかね。

ハヤシ:いやでも、それぐらい好きよ(笑)。今そう言われてピンときたけど……ドクターペッパーのことはオレが曲にしないとな、という使命感はあったかも。

——マジか(笑)。じゃあハヤシ君がやっていることはある種の啓蒙ってことなんですかね。

ハヤシ:ああ! 啓蒙ですねえ……。

——音楽的な啓蒙でもあり、食べ物の啓蒙であり、怪獣の啓蒙であり……。

ハヤシ:……キタねえ(笑)。確かに啓蒙したいというのはあったなあ。自分の好きな音楽ジャンル……ニュー・ウエイヴ、テクノ・ポップ、インダストリアル……もちろん流行った時期もあったけど、オレがやり始めた時期には何もなかったわけよ。でもそれがかっこいいと信じて、時代に関係なく、自分の好きなことだけをやり続けてきた。それは「これかっこいいでしょ?」っていう啓蒙なのかもしれないなあ……。

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