怒髪天はなぜいつも“想像の斜め上”を行くのか? 主催&出演イベントから独自スタンスを考察

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5月24日〈ハロー西荻〉

「普通はこういう仕事してるとどこ住んでるとか言わないのに、“西荻住んで25年”とか言っちゃってるからね」(増子)

 ファンにとっては、“聖地”としてお馴染の街、西荻窪。この日は地元のお祭りイベント〈ハロー西荻〉への出演、高井戸第四小学校校庭でのアコースティックライブだ。サッカーゴールポスト前に設置されたステージ、校長先生が立つ朝礼を思い出すような光景である。電源が安定しないため、増子が持ち前の巧みな話術でその場をつないでいく。「荻窪と吉祥寺は家賃が高かった」「若者が少ない」「普段何してんだろっていうおじさんが昼間から“戎(西荻の名物やきとり店)”で飲んでて、すげぇ街だなと思ったけど、今やその1人になってます」「オレの声聴いて美しい声だなぁと思ったら耳悪いんで、山口耳鼻科行って下さい、いい先生だから。内科もあります」流暢に語る西荻地元ネタは、初めて怒髪天を観るであろう家族連れや地元の人たちにも好評だ。

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 “シャレオツ”な感じの「オトナのススメ」、NHKアニメでお馴染みの「団地でDAN ! RAN !」、ディスコ〜ランバダの「己ダンス」。いつもと違う環境とお客さんを前に、炸裂する怒髪節。決して耳馴染みがよいとも、ポップとも言いがたい歌だが、なぜか親しみを覚えてしまうのが、不思議な魅力である。

 通常ロックバンドのアコースティック編成といえば、バラード調であったりと、ゆったりしたアレンジをしっとり聴かせる場合が多いのだが、怒髪天のアコースティックは実に騒々しく、にぎやかである。出番前にチンドン芸能社が「日本全国酒飲み音頭」で校庭をぐるりと回り盛り上げたが、まさに“ちんどん屋”に通ずる、お祭り騒ぎなのである。

 「もうちょっとやりたいけどダメなんだって。怒られるんだって。来年50歳になるからあんまり怒られたくない(笑)」

 〈西荻に日が昇る~〉と老若男女が盛り上がった「ニッポンワッショイ」でライブは終了した。

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 渋谷と西荻窪、両極端ともいえるこの街を、カッコつけることも媚びることもなく、どちらも自分たちのペースで、自分たちの色に染めた。こんなおっさんたちが、楽しそうにライブやって酒呑んでバカ騒ぎしてるのだ。日本のロックシーンに怒髪天がいることを誇りに思えた二日間であった。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログtwitter

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