アジカン&PHONO TONESのドラマー、伊地知潔の縦横自在なドラムプレイを分析

 5月27日にASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)がニューアルバム『Wonder Future』を、6月3日にはアジカンのドラマーである伊地知潔が参加している4人組インストバンドPHONO TONESがニューアルバム『Along the 134』を発表する。そこで今回は、ドラムに関してある意味両極端とも言えるこの二作品から、伊地知のプレイを分析してみようと思う。

 アジカンの『Wonder Future』は、ロックという歴史の大河につながるため、アメリカでのレコーディングを敢行した意欲作。当初は後藤正文が編集長を務める『The Future Times』の表紙を飾った縁もあって、Foo Fightersのデイヴ・グロールにプロデュースを依頼し、結局それは叶わなかったものの、Foo FightersのプライベートスタジオであるLAの「Studio 606」で録音が行われ、ナッシュビルでのミックスは、Foo Fightersをはじめ、Evanescence、Marilyn Manson、Deftonesなどを手掛ける名エンジニア、ニック・ラスクリネクスが担当と、強力な体制で制作が行われている。

 そして、本作のドラムの特徴はずばり8ビートである。アルバムのオープニングを飾る“Easter / 復活祭”や、中盤の“Planet of the Apes / 猿の惑星”を筆頭に、多くの曲で推進力のある縦ノリの8ビートが楽曲を引っ張っているのだ。Nirvana時代のデイヴ・グロール、Foo Fightersのドラマーであるテイラー・ホーキンス、さらには、以前からアジカンとの交流が深く、ニック・ラスクリネクスがエンジニアを担当した名盤『Meltdown』を残しているAshのリック・マックマーレイなどが連想されるが、彼らとの共通項はメタルへの愛情であり、そこがダイナミックなプレイの背景になっていると言えよう。

 もちろん、8ビートと一言で言っても細かいパターンは曲ごとに使い分けられているし、“Winner and Loser / 勝者と敗者”では、パートごとにコロコロと変わる拍子をスムーズに繋ぎ合わせてもいる。また、アルバムの後半には多彩なリズムパターンの曲が並び、不穏な雰囲気を煽る重心低めのタム回しから、細やかなハイハットの刻み、さらにはリムショットと変化していく“Prisoner in a Frame / 額の中の囚人”や、キメキメのモチーフから一転、間奏でシャッフルビートへと大胆に展開する“Opera Glasses / オペラグラス”など、多彩な引き出しを披露。デビュー10周年を経て、フレッシュな8ビートのロックに回帰しつつも、要所からはドラマーとしての確かな実力が感じられる。

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