乃木坂46の象徴はやはり生駒里奈であるーー12th選抜のメンバー構成とその可能性を読む

 また、今回の選抜メンバーで忘れてはならないのが、3列目の充実である。特にアンダーライブが始まり選抜とアンダーが拮抗して以降、アンダーで目覚ましい活躍を見せたメンバーをなかなか選抜にすくい上げられないという歯がゆさが、シングルリリースのたびに繰り返されてきた。今回の選抜では、際立った役割を担いながらも常に選抜とアンダーのボーダーにいたメンバーが、比較的多く顔を揃えることができた。かねてより随所で頼りがいを見せてきた衛藤美彩をはじめ、アンダーライブ成功の立役者になった伊藤万理華や井上小百合、齋藤飛鳥、斉藤優里といった顔ぶれが選抜に同時に入ることは稀有である。ライブグループとしてのアンダーを引っ張ってきた彼女たちが入ることで、テレビなどで披露されることの多い表題曲のパフォーマンスにも良い効果がもたらされるだろう。アンダーが組織として充実してきたことが、シングル選抜の活動に反映されるならば、それもまたこの一年余りで乃木坂46が育んできた大きな成果になる。

 ただし、実力者たちを並べたこの3列目の人選は、また別のジレンマをもたらすものでもある。すなわち、2期生メンバーが選抜に参入する枠を狭めてしまうことと裏表になるのだ。今回、2期生メンバーで選抜入りしたのは新内眞衣のみとなった。これはまず、今回の選抜からはセンター経験者の堀未央奈が漏れているという、大きな波乱を意味する。ただ、この人選の難しさはそればかりではない。アンダーライブと正規メンバー全員昇格を通じて1期生とようやく足並みを揃えることができた2期生が、ともすればここでまた置いて行かれるのではないかという危惧も生じかねない。12thメンバー活動期間にどのようにバランスをとっていくかがポイントになるだろう。リリース前後の期間には舞台『じょしらく』、『真夏の全国ツアー』、『16人のプリンシパル』と、1期生と2期生、選抜とアンダーが混在する大きなイベントが相次ぐ。そこでどのような関係性を示していけるかがその先のグループを占うことになる。

 乃木坂46のシンボルといえる生駒がセンターに再度配置され、その周囲をセンター経験者らグループを大きくしてきたフロントメンバーが固めるこの構図によって、12thメンバーは新たな仕切り直しに入ったとも言える。中央に配される人物は同じでも、それぞれが2年の間で築いてきたものも、グループとしての環境の変化も決して小さなものではない。この2年、どこに立とうとも背負うものが軽くなった時期などなかったであろう生駒を中心に、幾重にも頼もしくなったはずの彼女たちのパフォーマンスに期待したい。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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