LUNA SEAが演出する「V系シーンの総決算」 市川哲史が『LUNATIC FEST.』の意義を説く

 出演者が小出しに発表される中、ようやく5月18日、X JAPANとBUCK-TICKの参戦が満を持してアナウンスされた。年季の入った勘のいいファンたちは初期段階からSNSで盛り上がっており、見事なまでにバレバレだったようだ。当たり前か。

 まず初日は誰がどう見ても《エクスタシーサミット》再び、だ。

 YOSHIKI主宰のインディーズ・レーベルであるエクスタシーレコーズ所属の「Xの舎弟バンド」が一堂に会し、暴走族の集会ノリで共演ライヴしたアレだ。目黒・鹿鳴館で当初行なわれてた内輪のお祭りは、1991年@武道館、92年には@武道館&大阪城ホールにまで巨大化した。その後はYOSHIKI米国移住が幸いして、開催されていない。

 当時の宣伝コピーは、《無敵と書いてエクスタシーと読む 無謀と書いてYOSHIKIと読む》に《強者共がやってくる、今年も怪獣大戦争、大都市壊滅3秒前、今年も一発エクスタシー、気合い一発エクスタシーサミット》。中身は自ずと察してくれ。

 インディーズ時代のLUNA SEAも大阪城ホールは決意の白装束で出演してたし、そういえば私は武道館大会の総合司会をYOSHIKIから依頼されたのを想い出した。げろげろ。私が断ったので結局、大竹まことが巻き込まれる羽目になったっけ。合掌。

 話が逸れた。見よ、ラウドやらオルタナやらハードコアやら荒れ模様の初日に並ぶ、X JAPANとTOKYO YANKEESとLADIES ROOMとLUNA SEAの名を。エクスタシーじゃん。そして意外だったのは、フリーウィルの雄・DIR EN GREYの参加だった。

 YOSHIKI率いる東のエクスタシーとダイナマイトトミー率いる西のフリーウィルが、かつてこのサミットでも共闘するなど、V系黎明期から最凶タッグを組んで暴れ回ったことで、日本にV系文化が勃興した。しかしいろいろあって両者は長きにわたり、断絶状態にあったのもまた事実だったりする。それだけに今回のDIR EN GREY参戦は両者の雪解けというか、大袈裟だけどもV系史における一つの大団円に映らなくもないのだ。

 そんなLUNA SEA演出による和平交渉の成果というか、自らのフェスをV系シーン総轄の場に提供しちゃうというその<大きなお世話>的発想が、やはり彼ららしい。

 となると2日目は、1994年8月、福岡・仙台・札幌・新潟・大阪で開催された日本初の競演ライヴツアー《L.S.B.》21年目の復活、しかない。

 当時人気絶頂だったBUCK-TICK、LUNA SEA、SOFT BALLETの3バンドのスプレッド・ギグで、公演地別にL'Arc~en~Ciel、THE YELLOW MONKEY、THE MAD CAPSULE MARKETS、DIE IN CRIESといった注目株の若手バンドたち(失笑)がゲスト出演した、画期的なパッケージである。

 minus(-)は元ソフバの藤井麻輝+森岡賢だし、D’ERLANGERで唄ってるのは元ダイクラのkyoだし、KA.F.KAでドラム叩くのは元マドカプのMotokatsuとくる。となりゃもう、バクチク兄さんの登場で仕上げるしかないではないか。なあ?

 ちなみにこの2日目に出演するGLAYはきっと、初日だったら参加しなかった気がする。わははは。

 結局《エクスタシーサミット》にせよ《L.S.B.》にせよ、誰に頼まれたわけでもないのにLUNA SEAは自らが関わった<V系遺産>を修復公開することで、シーンごと自分たちを総決算しようとしているのか。

 まさに<使命感の暴走>なのだけれど、見飽きた音専誌フェスより5万倍はイノセントな《LUNATIC FEST.》を、私も勝手に強く推す。

■市川哲史(音楽評論家)
1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント」などの雑誌を主戦場に文筆活動を展開。最新刊は『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック刊)

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