結成40周年のモーターヘッド、中心人物レミーの壮絶なる人生とは? 現役パンクスがその自伝を読む

 今年70歳を迎える、モーターヘッドの中心人物レミー・キルミスター。彼の自伝の日本語訳『レミー・キルミスター自伝 ホワイト・ライン・フィーヴァー』が、ライブハウス「ロフト」グループの出版部「ロフトブックス」より出版された。2002年にイギリスで刊行されたこの本は、モーターヘッド結成40周年、レミー生誕70周年にあたる今年、ついに日本語訳されたのだ。

 今年は8年ぶりにフジロックへの来日が決定し、秋には2年ぶり22枚目のアルバムをリリース予定のモーターヘッド。

 この自伝には、幼少時代から2002年までのレミーの生き様が本人から語られており、モーターヘッドファンにはたまらない一冊となっている。

 モーターヘッドといえば、メタルファンだけではなくパンクスにもファンが多い。イギリスのパンクロック・ムーヴメントが起きる以前の1960年代後半から1970年代初期にかけて、アメリカではMC5やザ・ストゥージス、ニューヨーク・ドールズといった後のパンクに多大な影響を与えたバンドがあったが、その時代にはまだモーターヘッドは結成されていなかった。ホークウインドでレミーがプレイしていたのも74年頃の話だ。

 モーターヘッドのデビューが1975年であり、イギリスのパンクロック・ムーブメントの中心であるセックス・ピストルズ、ダムド、ザ・クラッシュも同時期の1976年〜1977年頃に結成やデビューをしている。ニューヨークパンクのラモーンズ、テレビジョン、パティ・スミスなどはモーターヘッドと同時期の1974年頃から活動しているところを見ると、パンクというものが世に出て来たと時を同じくして、モーターヘッドも産声を上げたと言っても過言ではないだろう。

 パンクの始まりと同時期に始まったモーターヘッドは、その音楽の荒々しくハードでスピード感溢れる名曲の数々と共に、瞬く間にパンクスにもファンを増やしていった。実際にダムドとは交流があり、本書の中でもダムドについて「奴らこそ真のパンク・バンドだよ、セックス・ピストルズと違ってな。ピストルズは偉大なロックン・ロール・バンドであり、それ以上でもそれ以下でもないんだ」と語られている。ほかにもダムドとの交流の様子がレミー節で炸裂していて、実に興味深い。

 とはいえ、モーターヘッドはセックス・ピストルズの「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」のカヴァーをアルバム『WE ARE MOTORHEAD』でやっているし、レミーはシド・ヴィシャスにベースを教えたこともあるというから、パンクというものに少なからず好意を抱いていたと思われる。

 MC5やザ・ストゥージス、ニューヨーク・ドールズ、パティ・スミスやテレビジョンなどは、パンクのみならず様々なロックの世界にも多大な影響を残し、そのフォロワーはジャンルの壁を越えて数多く存在している。

 モーターヘッドのサウンドやレミーの声は、実際にはパンクロックよりもハードコアパンクに近く、モーターヘッドは国内外のハードコアパンクスから絶大なる支持を今でも受け続けている。モーターヘッドの楽曲に影響を受け、カヴァーするハードコアバンドが無数に存在しているところを見ると、モーターヘッドのジャンルを超えた人気が伺える。パンクとメタルが喧嘩になったときにはモーターヘッドをかければ喧嘩が収まるという逸話があるほどだ。

 海外のフェスなどにはメタル系のバンドとハードコアパンクが一緒に出演することがたくさんあるが、モーターヘッドの話題では必ず盛り上がり、車中などで流す音楽でもモーターヘッドは必須だ。

 モーターヘッドファンには初期70年代〜80年代の『motörhead』『ACE OF SPADES』や『OVER KILL』『BOMBER』『IRON FIST』、ライブ盤の名作『No Sleep 'Til Hammersmith』などの作品に影響を受けた人間が多いが、90年代の作品『SACRIFICE』や『BASTARDS』などの作品も素晴らしく、特にハードコアパンクスは必聴のハードなアルバムだ。

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