ななみ、1stアルバムに込めた“人生の感情”を語る 「たぶん一生、愛を叫んでるんだろうな」

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 この人が歩んできた生きざまが透けて見える、強烈な作品である。ななみのデビュー・アルバム『ななみ』の完成だ。あまりに深い感情を含んだバラードの「愛が叫んでる」、リズミカルでポップな「I’ll wake up」と2曲のシングルをリリースしてきたななみだが、本作ではその両極をつなぐような曲たちが並び、さらにはそうした枠をはみ出すイメージの楽曲もある。ことにヴォーカルとソングライティングにおいては、このアーティストの高いポテンシャルがしっかりと表現されている。中学時代からシンガーを目指してきた彼女にとって、21歳の今ようやく自分のアルバムを形にできたことは感慨もひとしおだろうと思う。ここには、それだけの努力の積み重ねが反映されている。

 そして感じるのは、ななみがかねてから表明している「愛」というテーマ性の大きさと、その周りに重なって見えるいくつかのワードの存在だ。それは「夢」であり、「恋」であり、「青春」である。こうした言葉たちが指し示すものをたどればこのアルバムを浮かび上がらせることになり、ひいては彼女の人生を貫く何かにもつながるに違いないと考えた。というわけで今回のインタビューでは、13の楽曲群に触れながら、ななみが抱える感性や価値観、さらには生きざまの一端を射抜こうと思った次第だ。

 取材を終えた今は、ななみの歌が持つ深みと厚みは、やはり今どきの21歳にしては稀有であろう壮絶な半生を送ってきたからこそ生まれたのだと強く感じている。ただ、そんな中でも女の子としてのかわいらしさものぞかせているのが印象的だった。彼女には、これからも悩みながら、苦しみながら、転がりながら、多くの人の心を救う歌を歌っていってほしい。アルバム『ななみ』は、その尊い第1章になる。(青木優)

「『ななみという人間はこういう人間なんだよ』っていう色のアルバムにしたかった」

――このアルバムはあなたが21年間生きてきた、その人生のさまざまな感情が詰まっている作品だなと思います。

ななみ:ありがとうございます。私のことを知ってる上で聴いてくださると、全然違いますよね。

――そう、ななみさんの生きてきた背景をね。そのアルバム・タイトルは『ななみ』と、ストレートですね。

ななみ:はい。私は人間らしいアルバムを作りたいと思ってたんです。ただ、そうすると明るい曲ばかりじゃなくて、イヤなことも歌うし、毒もあるし……それを詰め込みすぎたら虹色のように色が多すぎて、バランスがとれないかなと思ったんですけど。でも実際に私が経験してきたことはこんな感じだったし、それは何も偽りないことだなと思いました。「ななみという人間はこういう人間なんだよ」っていう色のアルバムにしたかったですね。

――ほんとにその通りで、あなたらしさが全面に出ているアルバムだと思います。で、ライヴを観ていた身としては、そんなにビートが強い曲が多い人ではない印象があったんですよ。それがこのアルバムでは……。

ななみ:覆せました? やったぁ!(笑) それは私がひとりで演奏してるわけではないから、豪華になりますよね。どんなに明るい曲でも、弾き語りだとちょっとスローに聴こえたり、バラードっぽく聴こえたりしますから。このアルバムは、アレンジも全部気に入ってますね。

――しかも、明るい曲調のものもありますよね。

ななみ:「ななみは毒があるから明るい歌は唄わないんだ」みたいなイメージを持たれても仕方ないし。自分は薬よりも毒のほうが好きなんですよ(笑)。だけどまだ21歳だし、自分だって恋をした時とか毎日メイクする前にかわいい曲を聴いてテンション上げたりするので、そこは今にしかできないこと……この先、25歳とかになってそんな曲を出してもリアルタイムじゃないし、出すなら今だと思ったし。あと、恋があって愛になるわけだから、そこもちゃんと共感してほしいなというのもありましたね。

――うん、僕も同じことを考えました。恋についての歌をこういうふうに唄えるのは、21歳の今だからだろうなって。

ななみ:うん、そうですね。きっと私は、愛について歌っているけど、この愛に対しての価値観も、今、21歳らしさの愛だと思うんですよ。もしかしたら30歳になって振り返った時に「全然そんなの愛じゃないよ」って思うかもしれない。だから、「愛が叫んでる」とかもそうですけど、何やかんや言って、21歳らしいんじゃないのかなと思うんですけどね。

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