現役タワレコ店員がポップ最前線へーー有村架純主演『ビリギャル』主題歌に抜擢されたSakuのポテンシャルとは?

 さて、気になる彼女の新曲群だが……メジャーデビュー曲「START ME UP」は、Sakuの持つポピュラリティが遺憾なく発揮されたポップロック。バンドサウンドを軸にしながら、サビで加わるストリングスが楽曲を劇的に盛り上げるアレンジは“これぞメジャーの仕事”と呼べなくもない。カップリング「Violent Tiger」は表題曲よりもインディロック色が強めで、過去2作のミニアルバムでSakuにハマった人には納得の仕上がり。良曲に恵まれた本作はメジャーデビューシングルとしては上出来の1枚と言えるだろう。

 しかし、このシングルを聴いただけでSakuというアーティストの全貌がわかった気になってはいけない。一方のインディーズ1stアルバム『FIGHT LIKE A GIRL』にはカバー曲を含む全11曲を収録。ポップさはシングル『START ME UP』にも匹敵するのだが、そのポップさをさまざまな手法で表現しようとしているあたりに、彼女のアーティストとしてのルーツが垣間見れる。過去2作では渋谷系寄りのカバー曲を披露してきたが、今作ではTHE CURE初期の代表曲「BOYS DON'T CRY」がピックアップされており、原曲に忠実な疾走感あるカバーを楽しむことができる。「SakuがTHE CUREのカバー!?」というその事実に首を傾げる音楽ファンもいるかもしれないが、本作のトータルプロデュースに吉田仁、サウンドプロデュース&アレンジにカジヒデキ&野村陽一郎、そしてレコーディングにカジのほか堀江博久、WATARU.S(SISTERJET)、斉藤州一郎(Analogfish)などの面々が参加していると聞いて、思わず納得してしまうのではなないだろうか。

 「START ME UP」という極上のポップソングを引っさげて、いよいよメジャーシーンに進出するSaku。ノスタルジックなメロディからはどこか懐かしさ……往年のポップソングにも通ずるフレーバーが感じられるが、だからといって彼女が懐古主義ということは一切ない。サウンド含め単なる過去の焼き直しで終わらずにちゃんと“今の音”、“2015年のリアルな音楽”として成立しているのだ。普遍的なポップネスを奇をてらうことなくストレートに鳴らした結果、生まれるのは“今の音”。これこそが現在22歳のSakuというアーティストにとって、唯一無二の個性なのかもしれない。

 そもそも現役のタワレコスタッフという時点で、普通の音楽ファンや新人アーティストより恵まれた環境に置かれているSaku。国内外の“時代の音”をリアルタイムで体感できる彼女が今回のメジャーデビューを機に、この先どんな音楽を生み出していくのかも気になるところ。そして、そんな彼女が世に放つ音楽が世間でどう評価されるのか、いち音楽ファンとして楽しみは尽きない。

(文=西廣智一)

■リリース情報
シングル
『START ME UP』
発売:2015年4月29日
AICL-2862 
¥1,000(税抜)
01. START ME UP
02. Violent Tiger
03. START ME UP -映画「ビリギャル」劇中歌 edit-

アルバム
『FIGHT LIKE A GIRL』
発売:2015年4月29日
PECF-3140
¥2,300(税抜)

01. FIGHT LIKE A GIRL
02. ゆがんだやつ
03. BOYS DON T CRY
04. Silver Moon
05. Lost In Translation
06. Sync-O-Cue
07. あたしを好きだなんて天才かも
08. SAKU-TV
09. あたした ちにTomorrowはない
10. 走る少女
11. Sing a Song

■ライブ情報
『Saku「FIGHT LIKE A GIRL」&「START ME UP」RELEASE PARTY★』
日時:7月2日(木)18:15 OPEN 19:00 START 
会場:渋谷WWW
料金:前売¥3,000 / 当日 ¥3,500(ドリンク代別)

http://sakumusic39.com/

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