LUNA SEAが歩んできた孤高の道 ロックバンドとしての美学とビジョンに迫る

 LUNA SEAが主宰する“史上最狂のロックフェス〈LUNATIC FEST.〉”が2015年6月27日(土)、28日(日)幕張メッセにて開催される。ヴィジュアル系のみならず、日本の音楽シーンに大きく影響を与えるバンドの初フェスだけに、その出演者と内容に期待が高まる。ちなみに、各メンバーの活動は別として、LUNA SEAとしての外部ロックフェスへの参加もまだないのである。去る3月20日、恒例ともいえる“月相”に合わせた重大発表。中身は「新月の夜に会場図面公開」という肩透かしを思いきり喰らったわけだが、未だ発表されない内容に予測して思いを馳せる、それも孤高のバンドの“SLAVE(奴隷)”の定めと言い聞かせるしかない。

 2010年〈REBOOT〉のメッセージとともに本格的に活動再開以来、とどまることをせず精力的な活動を見せているLUNA SEA。多くのヴィジュアル系バンドに見られるフォロワーはもちろんのこと、凛として時雨、Base Ball Bear、戸高賢史(ART-SCHOOL)など、その広い影響力は測りしれない。直接的な影響下ならずとも、ロックへの初期衝動はLUNA SEAがきっかけだった、初めて手にしたギターはグラスルーツ/エドワーズのINORANモデルだった、という人も多いだろう。90年代に最も売れたギターとベースは、フェンダーでもギブソンでもなく、ESP関連のLUNA SEAモデルだったと言われたほどである。

 何故、これほどまでに人気と影響力を与えたのか。詞では“キミ”を多用しながらも、ファンを“おまえたち”と呼ぶ、「我が愛しきSLAVEたちよ」RYUICHIのナルシストぶり、「オレたちは音楽に選ばれた人間だから」傲然たるSUGIZO。絵に描いたような気高いアーティスト気質は確固たる自信があるからこそ成立する。自他ともに認める至高であり孤高のバンド、それがLUNA SEAである。

密度の高い音楽性

 LUNA SEAの音楽の特徴は“密度の高さ”とでも表現するべきだろう。音楽知識に明るくなくとも解る、可能な限り細密に練り上げられた構築美である。J-POP手法の常套句と言われる、“Bメロ”の概念が存在しない楽曲が多いこともよく挙げられるが、コード進行やボイシング云々といった専門的な説明を用いずとも、一筋縄でいかない音楽性を感じられるはずである。一聴すれば「神秘的、幻想的」そんなありきたりの言葉で表現することこそふさわしい、壮大に作り上げられた世界に飲み込まれてしまう。様々なジャンルで多彩な音楽を紡ぐといったわけでもなく、プログレや実験音楽のように難解なものでもない。高度な技術ではなく、疾走するアンサンブルがぴたりと止まるブレイクやキメの瞬間に、あり得ないほどの情報量を詰め込んだLUNA SEAらしさを感じたりもする。もちろん、掘り下げるほどの深みはあるのだが、誰にでも解りやすい美学を感じさせるバンドなのである。

エクスタシーからメジャーへ

 1991年、1stアルバム『LUNA SEA』はX JAPANのYOSHIKIの主宰するエクスタシーレコードからリリースされた。インディーズながらも莫大な宣伝費を投資することで度肝を抜いた同レーベルだが、今作にはX『VANISING VISION』(1988年)の3倍もの宣伝費が掛けられていることから、どれほどの力の入れ具合であったかが解るだろう。奇抜なアーティスト写真を用いたジャケットと、従来のロックバンドの枠に収まりきらない音楽は、当時のレコード店がどの棚に陳列すればよいのか迷ったという逸話を残している。インディーズという概念もまだ一般には浸透しておらず、“ヴィジュアル系”はもちろん、“J-Rock”という言葉すらなかった、まだ邦楽ロックも“歌謡曲/ニューミュージック”とされていた時代である。

 エクスタシーの冠は時に誤解を招くことにもなった。「Xの弟分」と称されたこともあったが、鬼気迫るディープな精神世界は師弟関係にあったAION、耽美的なリリシズムはDEAD ENDに近く、同レーベルの持つ体育会系ヤンキーノリとは少し別なところにいた。そんな中、1992年にメジャーデビューを果たした『IMAGE』はオリコン初登場9位、メジャーにおける快進撃が始まったが、反面、風当たりも強く、居場所らしいところは無かった。そんな状況が劇的に変化したのは1994年、SOFT BALLETとBUCK-TICKと共に、バンド名の頭文字を取った〈L.S.B.〉というイベントで全国を廻った時だ。この頃の両バンドはインダストリアルやダンスミュージックといった前衛的な音楽をいち早く取り入れ、独創性を作りだしていた。ファン層もエクスタシーとは全く違っていたのである。真っ赤な髪と女形衣装に身を包み、ロックギタリストながらも坂本龍一やマイルス・デイヴィス、フランク・ザッパをフェイバリットとして挙げていたSUGIZOに見られるような音楽趣向は正直、こちら側のほうが合っていたのかもしれない。現にこのイベントを機に初めてLUNA SEAを目にし、その創り出す世界に魅了されたファンは数知れず。そして、この年の10月、バンドの最高傑作の呼び声も高い『MOTHER』をリリースする。

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