笹口騒音ハーモニカ『笹祭』の壮大なスケール感 “笹口尽くし”の総決算ライブを観た

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うみのて

 10か月ぶりのライブとなった5人編成のロックバンド「うみのて」は、先鋭的な演奏を見せつけた。時間も深まったためか客席は満杯。「もはや平和ではない」、「東京駅」といったキラーチューンで観客を沸かせた。5月20日には2ndアルバム「21st CENTURY SOUNDTRACK」の発売が、6月30日には代官山UNITでのワンマンライブが決定しており、今年は大きな動きがありそうだ。

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笹口騒音オーケストラ

 楽団編成の笹口騒音オーケストラは、連続テレビ小説『あまちゃん』の劇伴で大友良英が見せたスペシャルビッグバンドに近いものを感じた。途中から登場したサックスやトランペットの演奏には音楽が持っている根源的な楽しさがあり、ソリッドなうみのてとは違う明るさが存在した。童謡を聴いている時のような郷愁を感じさせる「あおいちゃん、海え行く」のスケール感は圧巻の一言で、今後の可能性を感じさせる。

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太平洋不知火楽団

 そして、トリをつとめたのは、3月28日に解散する太平洋不知火楽団。

 05年から続くうみのて以上に海のイメージが強いバンドだが、「たとえば僕が売れたら」の「小高い丘に小さな家を建てて 暮らしましょうよ あなたとふたりで 津波が来たら沈む町を見下ろし 踊りましょうよ 静かな庭で」という歌詞が、震災以前に書かれたことには、改めて驚かされる。大内ライダーの荒れ狂うベースが印象的だった。

 ライブ終了後には、笹口が監督した映画『三億年生きた笹口』が上映された。

 出演俳優の多くがこの日のライブに登場したバンドマンで、全編笹口の楽曲がかかる本作は、壮大な音楽劇であると同時に笹口の世界観をそのまま映像化したものだった。

 どのライブも、とても楽しめたが、終わるバンドもあれば、活動再開するバンドもあり、笹口が語るように今までの総決算となるライブだったと言える。

 また、うみのての新曲や笹口騒音オーケストラの作風からは、エッジの効いた社会性を内包した上で、より壮大なスケールで歌おうという意思が感じられた。

 「もはや平和ではない」で平和な時代の象徴として歌われていた『笑っていいとも!』は、昨年終了し、ISIL(イスラム過激派組織)の投稿動画を用いた残酷な処刑場面が全世界に流れる姿は、「NEW WAR (IN THE NEW WORLD)」で歌われた「新しい戦争」が、最悪の形で具現化したかのように見える。

 まるで預言詩のような、うみのての歌に、現実が追い付いてしまった今、どのような新展開を笹口が見せるのか。今後の動向を見守りたい。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■リリース情報
うみのて 2nd Album『21st CENTURY SOUNDTRACK』
2015年5月20日(水)

収録曲
01. 恋に至る病
02. LOVE & PEACE & etc
03. Tokyo Night Music
04. 生活ファンク
05. EIGA
06. ブラックホール
07. サラウンドごっこ
08. UMINOTE LAST TRAIN
09. 言葉狩りの詩
10. ダイイングメッセージ
11. This is the End
12. たとえば僕が売れなかったら(bonus track)

■イベント情報
2015年6月30日(火)
うみのて 2nd Album 「21st CENTURY SOUNDTRACK」レコ発超ワンマン!!!
会場:代官山UNIT
開場:18:30 / 開演:19:30
前売り ¥2,500(税込)
4月上旬プレイガイド販売予定

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