嵐『Sakura』特典映像は“非ヲタ”向けの総括的作品? 青井サンマが本音レビュー

 さて、今回の初回限定盤には久々にメイキング・ビデオもつきました。これこそファン向け商品。メイキングをつけてくれるなら文句言いません!……と思っていたのですが、そのメイキングがなかなかストレスフルな仕上がりになっていてアレレでした。なんと、全編男性のナレーションつき。『はじめてのおつかい』または『ぶらり途中下車の旅』のような、おじさんナレーターが映像にちょいちょいツッコミを入れる、あのスタイルです。しかもその量が多い。ヲタは嵐がひそひそ話をしている、その声に耳を澄ませたいのに、「こそこそ話を展開中です」という解説がかぶせられます。見ればわかるから黙ってて……。何かと「◯◯な△△くん」という修辞をつけていますがファン相手にその知識披露は恥ずかしいです……。メンバーのコメントをテロップで出すときに、テキトーに色をつけているのもちょっと……どうせつけるならメンバーカラーにしていただけませんか……。

 いちばん謎だったナレーションは、テレビ番組のタイトル検索に“嵐”と入れるとたくさんの番組が出てくるという櫻井くんのトークにかぶせた「“嵐”はねぇ〜、仕方ないですねぇ〜。何にでも使えちゃいますから。ちなみに、デビュー曲も「A・RA・SHI」。嵐の「A・RA・SHI」。嵐の中の嵐ってことですかねぇ?だから野外のコンサートは必ず雨が降るんです。」という箇所。昨日ファンになったばかりの人でも知っているようなことを、しつこいオヤジギャグに乗せて、誰に向かって語りかけてるんでしょうか……。

 これはもしやどこかの番組で流すのか、あるいはCDショップの店頭で流しっぱなしにするのか、それならば理解できなくもないですが、もしそうだとして、それを初回限定盤購入のエサにして通常盤との複数買いを促すのはいかがなのでしょうか……。ファンの足元を見ながら、ファンではない方向を見て作っているような気がして寂しいです。

 文句を言うなら買わなきゃいいというご指摘もあるかとは思いますが、まず買わないと見られない状況ですし、そもそも価格程度の価値がなかったかと言うと、そんなことはありません。嵐はかっこよかった。企画に疑問はあれど、嵐の演者としての技量や姿勢を否定するつもりはなく、シングルを出してくれるだけでありがたいことだと思っています。ただこちらの期待値が高すぎただけです! すみません!

 というわけで、欲しがりなヲタ的には疑問符のつくMVやメイキングでしたが、シングルとしては先述のように嵐のシリアス路線の「総括」的な佳作だと思いますので、ぜひご一聴を。通常盤は3曲入っていてお得感満載です!

■青井サンマ
 ヲタ歴7年のゆるくぬるい嵐ヲタ。独断解説「嵐の聴き方」はTwitterまとめサイト『Togetter』で100万viewを突破。ウェブメディア『cakes』で「嵐の聴きかた」を連載。著書に『嵐ヲタ絶好調超!!!!』(大和書房)。Twitter

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