ヒット連発の作詞家=zoppが語るコトバ術「映画を観ている感覚で、情景や感情が見えるようにする」

――作詞をする際、時間帯や書き方などのこだわりといった、ルーティーンのようなものはありますか。

zopp:僕はどこでも歌詞を書くことはできます。でも、ダラダラ書かず、時間を決めてそれまでには必ず一度提出するというルールは決めています。秋元さんも過去に仰っていたのですが、作詞は答えのないものなので、「1+1=2」みたいな数学的なものではなく、文学的な要素が強い。また、作り上げたものが良いのか悪いのかという判断も、人によって違います。そういった答えのないものは、ゴールを決めなければ何時間でも悩めるんです。僕は「作詞はカレーライスのようなもの」と考えていて、一度作って少し寝かせた方がより作品が良くなると思っています。最近は作詞の制作期間が限られていて、18時に仕事が来て、次の日の朝10時までに書く、という無茶振りもありました。それは何も珍しいことではなく、良いメロディや良い歌詞を作る以前に、早く書けるということは今の音楽業界で作家として生きていく上ではマストなんだと思います。締め切りが短く何度も直される環境が当たり前なので、時間を決めて、ダラダラとやらないんです。

――書く場所にこだわりはありますか?

zopp:なるべく1人で書かないようにします。オフィスに行って、スタッフがいるところで書き、書きながら人に意見を求めたりするんです。自分の中から出てくるものというのは限られていますし、ふと何か言葉を思い出したいとき、周りに人がいればすぐに訊ける。オフィスには、知識のあるスタッフがたくさんいるので、「このアーティストに対してこの言葉はどうか?」ということを訊けばすぐに返ってきます。それを知らないまま、書き終えてから「実はこのタイトルもうあるんですよ」と第三者から指摘されて、書き直すのは時間の無駄ですからね。それならばたくさんの人に早めに歌って聴かせて相談した方がいいです。だから、1人で作っているというよりは皆で作っている感じだと思います。

――作り方としては1人の作家というよりバンドのようですね。

zopp:そうですね。何を言われても曲げたくない部分は持っていますけれど、人の意見も尊重します。

――先ほど「映画が好き」と仰っていましたが、今まで観てきた映画の中でご自分の世界に強く影響を与えた作品はありますか。

zopp:僕はバットマンのようにハードボイルドなものやアクションが好きなので、物語性の強いものはアクション系の歌詞が多かったりします。人が死んだり撃たれたり殴られたりする歌詞というのは、世間一般的にはあまり多くないと思いますが(笑)、僕はそういうものを書くのが好きです。

 『青春アミーゴ』は、『ゴッド・ファーザー』のような世界観を描こうとして作った曲です。友情の部分は『グラン・ブルー』を参考にしていて、曲の仮タイトルも同作の舞台である島の名前から取った『タオルミナのきれいな空』というものでした。だから”Si”(イタリア語、スペイン語などで”Yes”の意)という言葉などを入れています。ただイタリア語では「友達」は「ミ・アミーコ」となって日本人には馴染みがないので、スペイン語の「アミーゴ」の方が耳なじむと思い、調整したんです。

――音楽の原体験はU2などのバンドものということですが、実際にバンドへ歌詞を書いてみたいという気持ちは>

zopp:今でも書いてみたい気持ちはあり、最近はビジュアル系のバンドの方たちの歌詞のアドバイザーもやっています。とは言っても、バンドマンが職業作家の歌詞を歌う、ということにはイメージとして違和感がありますから、僕としては「アドバイスしただけ」というスタンスの方が美しいと思っています。

――たしかに自作自演の人に書くのには気を使いそうですね。

zopp:勇気が要ると思います。そういう方の歌詞はすごく個性があって、自分の生き様のようなものを反映しています。それに対して僕たちはどちらかというと、仮想世界を作っている感覚が強いです。

(取材・文=中村拓海)

【「zopp」作詞は答えのないもの(後編)】

■zopp プロフィール
1980年2月29日生まれ
アメリカ、マサチューセッツ州ボストンの大学でコンピューターテクノロジー専攻。
16歳の時、初めてのアメリカ留学を経験。その時に勉強の延長線上で様々な海外アーティストの歌詞を翻訳している内に、作詞の世界に魅せられ作詞家を目指す。作詞活動と並行して、作詞家の育成(zoppの作詞クラブの講師)、ネーミング等を考える(コトバライター)、テレビ出演など、多岐にわたって活躍の場を広げている。
2013年11月11日に、初小説「1+1=Namida 」(マガジンハウス)を上梓し、小説家デビューを果たす。

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zopp『1+1=Namida』(マガジンハウス)

■リリース情報
zoppによる初の書き下ろし小説『1+1=Namida』
出版社: マガジンハウス
296P/価格:1365円

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