振付師・竹中夏海インタビュー 美少女ヒロインと女性アイドルの共通点とは?

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自身のアイドル論を熱心に語ってくれた。

――竹中さん自身、学生時代はクラブ活動でリーダーシップを発揮していたそうですね。

竹中:ずっと部長でした。だから、副部長タイプの人とはよく仲良くなります。なでksジャパン(竹中の友人たちで女性アイドルファン仲間。竹中の他、モデルの二宮なゆみ、小口桃子、日笠麗奈、タレントの渡賀レイチェルがいる)だと、なゆみがそのタイプです。いつも副部長だったらしいので(笑)。私は先輩とつるむよりは、後輩の子たちと接するほうが断然多かったですね。中学2年の時に演劇部ができたので、中1から入ってくる子が10人いて、わざわざ転部して演劇部に入る中2は私しかいなくて、さらに中3はゼロだったから私だけが先輩という。そうなると、もう天下じゃないですか(笑)。高校の時は新体操とチア部にいたんですけど、大会とかではそんなに強いところでもなかったので、先輩も少ししかいなくて。

――新体操部とチア部って、演劇部とはまたぜんぜん違う。

竹中:そうですね。でも、演劇部はほぼダンス部だと思われていたし、新体操部はただストレッチしに行ってたようなものだし、チアダンスは自分でチームをつくって……どれも私がどうにかできる規模だったんです(笑)。だから、ほぼ私の色でできたっていう。

――いずれも身体を使った表現ってところで共通していると思うんですが、大学に進学した竹中さんは、そこからさらにそれを突き詰めて勉強していった。その時の体験が今の振付のストックになっていそうですね。

竹中:だから、「ハロプロが好きなわりに、ハロプロのダンスとぜんぜん違いますよね」っていうのはよく言われます。

――ハハハ。

竹中:私がつくる振付に関しては、アイドルからっていうよりも自分がやってきたものの影響のほうが強いと思いますね。

――アイドルの振付を始めるようになってからは、いろんなグループのダンスをチェックするようになりました?

竹中:そうですね。でも、必要に迫られて見るというよりは、趣味ですね。Berryz工房をテレビで知ってアイドルに目覚め、PASSPO☆に出会うまでに1年間くらいあったんですけど、その間、アイドルにツテもなければ仕事もないので、よくイメージトレーニング的なことをしていたんです。AKB48のアルバムを借りてきて、曲を聴いて勝手に振付をつくる。“こういう曲だったら、私はこういう振りにする”って。その後、YouTubeでライブ映像を見ながら答え合わせをする……みたいな。“こういうふうになってたんだ!”とか、逆に自分が考えていたものに似ていたりとか、いろいろと発見があります。

――『アイドル=ヒロイン』の「実践編」では、夢みるアドレセンスの女性向けイベントの舞台裏を書いています。竹中さんが企画の立ち上げから関わって、実際にイベントが開催されるまでを説明してくれていますけど、振付をつくる作業とはぜんぜん違いますよね。

竹中:飽きっぽいので、いろいろやっていたいんですよ。そういう意味で、私は職人気質じゃないと思うんです。作品をずっと黙ってつくり続けるというよりは、常にいろいろやっていたい。振付をつくってる時は文章を書きたくなるし、文章を書いている時は振付の仕事って楽しいなって思うし、なでksの皆でファン目線で話してる時は“中の人”として聞いたりすることもある。いろんな立場で考えるというか。

――あらゆることが同時進行で走っている状態だと思うんですけど、例えば家にひとりでいる時とか、そういうプライベートの時も仕事のことを考えていたりしますか?

竹中:私、本当に一人暮らしが向いてなくて(笑)。というのも、頭の中でモヤっとしているものを常にアウトプットしていくことが好きで、誰か聞いてくれる人がいないとダメなんですよ。だから、実家の母とか友達とか誰かしら近くにいてくれないと、すごくストレスになるんです(笑)。誰かに話さないと、考えてることがパンクしそうで。

――何か思いついたら、どんどん口に出して整理していきたいタイプ?

竹中:そうですね。このテーマで本をつくりたいとか、雑誌でこういう企画をやってみたいとか、手書きでバッと書くことが多いです。大学の時からそうでした。殴り書きみたいな感じです。衝動的にアウトプットして、さらに企画として成立させる。なでksジャパンでやってることは、そういうことですよね。2週間に1回、生配信をやってるので、その時に思いついたことを時間かけて皆で形にしていく。昨日も皆で遊びに行っていて、その時に私の頭の中で思っていた――まだ考えは固まってないんだけど、なんとなく面白そうだなみたいな――そういうアイデアを話すと、「じゃあ、こうじゃない?」みたいなやり取りがあったり。で、帰った後もLINEでやり取りが続いたりとか。

――『IDOL DANCE!!!』の中で、アイドルのプロデューサーには興味がないと書いてましたけど、あれから2年が経って今はどうですか?

竹中:今は前よりもさらにそういう気持ちがないです(笑)。いろんな人を見てきて、アイドルの子が幸せになるには、やっぱり持久力のあるプロデューサーが大切だと思ったんですね。でも自分には持久力がないから、アドバイザー的なことしかできない。こうしたらいいのに、ああしたらいいのにというのはすぐに思いつくけど、長い目で見てあげて……って考えると難しいから、それだったら自分はやらなくてもいいかなと。それに今は自分の教え子もいっぱいいるので、手一杯なところもありますし。ただ、いろんなアイドルをイジってあげるテレビ番組はつくってみたいです。『Matthew’s Best Hit TV』とか『パパパパPUFFY』とか、2000年代のあの頃の番組には、例えばSPEEDのたかちゃんやあややなどが出ていましたけど、今は当時よりアイドルの数はぜんぜん多いのに、ああいう番組がないじゃないですか。ああいう感じで、アイドルが活かされる場所ができたらいいなと思ってます。

――じゃあ、手書きで企画書を書いて……。

竹中:どこかに出しましょう(笑)。

(取材・文=上野拓朗)

■書籍情報
『アイドル=ヒロイン~歌って踊る戦う女の子がいる限り、世界は美しい~』
発売:2015年1月20日
著者:竹中夏海
版元:ポット出版
四六判/並製/144P 1,500円+税

■イベント情報
【『アイドル=ヒロイン~歌って踊る戦う女の子がいる限り、世界は美しい~』発売記念「アイドル=ヒロイン」妄想キャスティング会議】
日時:1月21日(水)
場所:お台場・東京カルチャーカルチャー
出演:
・第1弾出演者
酒井瞳(アイドリング!!!)
安斉奈緒美(PASSPO☆)
西七海(虹のコンキスタドール)+お目付役・近藤さん(虹のコンキスタドール美人マネージャー)
竹中夏海(振付師)
・第2弾出演者
レナ(バニラビーンズ)
傍聴人:なでksジャパン(二宮なゆみ、小口桃子、日笠麗奈、渡賀レイチェル)
OPEN 18:30 / START 19:30

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