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中納良恵の快作『窓景』の音楽的背景とは? EGO-WRAPPIN’とソロのキャリアを振り返る

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 EGO-WRAPPIN’のヴォーカリスト・中納良恵の2枚目のソロアルバム『窓景』(まどけい)がリリースされた。本作は早くも2015年ベストにノミネートされるべき素晴らしい作品だが、『窓景』をより深く味わうためにも、EGO-WRAPPIN’と中納良恵のキャリアを振り返ってみたい。

特異なルーツミュージックとJ-POPの融合

 EGO-WRAPPIN’といえば、ジャズや昭和歌謡、ブルース、スカ等をルーツとした独特の音楽センスを誰もが思い浮かべる。EGO-WRAPPIN’が全国的な注目株として急浮上したきっかけとなったミニアルバム『色彩のブルース』(2000)から、音楽誌等で絶賛された2ndフルアルバム『満ち汐のロマンス』(2001)、ドラマ「私立探偵 濱マイク」の主題歌に採用された楽曲「くちばしにチェリー」(2002)までのメジャーデビュー期における快進撃は、音楽ファンのみならずお茶の間にもEGO-WRAPPIN’の名を轟かせた。

 バンドが前述のような濃厚で特異な音楽の影響下にありながら、コンスタントにタイアップを獲得し続けるなど、中心とは言わずともJ-POPシーンにおける確かな存在感を持つに至ったのは、快挙としか言いようがない。実際、EGO-WRAPPIN’やクレイジーケンバンドが中心を担って昭和歌謡ブームが生まれ、筒美京平や前田憲男といった音楽家に当時の若い世代が注目したのは、J-POP史上でも特筆すべきムーブメントに数えられるだろう。

 EGO-WRAPPIN’のルーツであるジャズとは、一般的に参照されることの多いモダンジャズのみならず、戦前のビッグバンドや、ビートルズ旋風以前の洋楽をすべてひっくるめた呼称としてのそれである。名曲「色彩のブルース」は往時のキャバレー音楽を彷彿とさせ、まるで昭和のダンスホールのような東京キネマ倶楽部でのワンマンライブは、バンドの世界観を余すところなく表現しきっていた。

 メンバーの中納良恵と森雅樹は洋楽受容から自らの音楽性を構築してきた世代に含まれ、サンプリングも含めた編集的観点を当然のように備えていることは容易にうかがえるが、そうした感性と手法で昭和歌謡にアプローチしたことは改めて特筆に値する。例えば中納良恵の歌唱法は、西田佐知子やいしだあゆみらの妖艶でアンニュイなテイストから、和田アキ子や弘田三枝子のようなパンチの効いた歌唱まで変幻自在に取り入れているが、過去のアーカイブから必要な要素をサンプリングする感覚は、まさに90年代以降ならではのものである。EGO-WRAPPIN’が参照したかつての昭和歌謡の世界は、ほぼ完全な分業体制であり、洋楽受容の機能を担うのはいわゆるバンマスの役割であった。歌手はバンマスのビジョンのもとに自己の歌唱法を確立していったのだが、中納良恵はこのバンマスと歌手を同時にロールプレイしたのである。このように新世代のセンスと手法で昭和歌謡をリバイバルさせ、J-POPシーンに新風を吹き込んだEGO-WRAPPIN’の功績は、もっと評価されていい。

 後年、中納は「ルパン三世のテーマ」を歌うことになるが、ジャズとポピュラー音楽の融合では先駆的存在であるバンマス・大野雄二の仕事と自らのキャリアがシンクロしたとき、彼女は「答え合わせ」をしたような手応えを得たのではなかろうか。

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