いずこねこ、ラストライブで見せた涙 “不在のアイドル”が辿り着いた場所とは

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熱唱するいずこねこ。

 いずこねこは、サクライケンタの変拍子の楽曲が奏でる物悲しい世界観を、茉里のボーカルと激しいライブパフォーマンス、そして飼い主のMIXが加わることで、ネガティブな歌詞をアグレッシブなライブで見せるという独自の表現となっていた。

 思えば、いずこねこは、ずっと「終わり」について歌っていたように思う。自殺志願者の内面を歌ったかのような「BluE」はその象徴だろう。しかし、それはあくまでサクライのディストピア的世界観の表現でしかなかったのだが、突如決まった活動終了によって本当に終わることとなり、文字通り「終わり」と向き合わざる負えなくなった。

 細かい背景や理由については、あえて触れないが、2014年のいずこねこは、どうやって、みんなが納得のいく形で、活動を終わらせるかを模索する一年だったと言える。

 すでに一度、いずこねこは8月31日に活動終了を宣言しており、茉里はミズタマリとして元BiSのカミヤサキとプラニメの活動をはじめており、サクライケンタもこのイベントに出演していたコショージメグミと宗本花音里が参加するMaison book girlのプロデューサーとして新しいスタートを切っている。

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出演者で記念撮影する一幕も。

 そのためか、「終わり」の余韻に全員が浸るという感じはあまりなかったのだが、今年3月のぐちゃぐちゃの状況を思うと「よくぞ、ここまで持ち直して大団円で終われた」と、感慨深かった。

 それにしても名は体を表すというが、茉里からいずこねこというアイドルが完全に分離した今の状況は、文字通りいずこねこ(何処猫)という不在自体がキャラクター化した状況だとも言える。哀しい別れかもしれないが、このライブが終わることで、不在のアイドル・いずこねこは完成したのかもしれない。

 映画では、伝説の猫・いずこねこが、イツ子の肉体を通して2035年にアイドルとして復活する。そう考えると、この解散ライブ自体が、作中の物語をなぞっていると同時に、映画へとつながるエピソード0のようでもあった。

 アイドル映画の補完イベントとしても、いずこねこというアイドルの終わらせ方としても、見どころ満載で、映画とライヴ、フィクションとノンフィクションといった虚実が入れ子構造となった刺激的なイベントだった。

(文=成馬零一)

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