布袋寅泰のギタープレイ徹底解剖 彼の奏でるフレーズはなぜ耳に残るのか? 

夢を追いかけてイギリスへ

 ギター、機材選びにも独自のスタイルがある。フェンダーやギブソンといったトラディショナルなギターを特に好んで使うわけでもなく、ギタリストなら誰もが憧れるようなヴィンテージ機材には目もくれずに最新鋭のシステムを作ってきた。使い込まれたボロボロなギターを抱える姿は想像しにくい。トレードマークの幾何学模様、あの布袋モデルでさえ、BOØWY時代から愛用しているのにも関わらず、使い込まれた感がない。昔からイギリスの少年たちの憧れは、真新しいスーツとピカピカの靴で、カッコいいスポーツカーに乗ることであるという。イギリスの偉大なるギタリスト、エリック・クラプトンもジェフ・ベックも今なお、いつも抱えているのはピカピカの真新しいストラトキャスターだ。デヴィット・ボウイやマーク・ボランに憧れた布袋は、自然と英国少年のような心を持つようになったのかもしれない。

 「あのキル・ビルのカバー、最高だったよ!」初めて布袋のステージを見たイギリスのオーディエンスにそう声をかけられることもあるという。50歳にして家も車も引き払い、新たな夢を追いかけるため、憧れのイギリス・ロンドンへ移住した。「世界中どこへ行ってもギターの弦は6本だからね」まさに布袋らしい言葉である。イギー・ポップをゲストに迎えたことで話題となったニューアルバム『New Beginnings』には布袋の声は入っていない。意外にも30数年のキャリアにおいて、ここまでインストに重きを置いたオリジナルアルバムは初めてであり、そこに新たな挑戦と決意を感じる。とは言え、ギタリストのインストアルバムのようなギタープレイに重きを置くというよりも、楽曲を構築する要素としてのギターがそこにある。それはSF映画のサウンドトラックのようでもあり、ドイツの新型照明システムが導入された『JAPAN TOUR 2014 -Into the Light-』にて、ライティングとサウンドが融合するアートのような、誰も観たことのないステージを創り上げた。

TOMOYASU HOTEI JAPAN TOUR 2014 -Into the Light- TRAILER

 歌とギター、ロックとギター、アートとギター、常にそこにはギターがある。「最新のHOTEIが最高のHOTEI」進化し続けるアーティスト像とともに、布袋寅泰はギタリストというものの存在感を、そして楽器としてだけではないギターの魅力、カッコよさを教え続けてくれるのだ。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログtwitter

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