長渕剛が語る、命がけで表現するということ「本気でかかってくる者には、逃げるか、行くかしかない」

「今でも自分の中に10代があって、でもそこに背いてばかりの大人がいる」

ーーJFN系列のラジオ番組『SCHOOL OF LOCK! Saturday 長渕LOCKS!』が10月よりスタートして、10代の若者たちの間で大きな反響を呼んでいます。長渕さんには今の10代はどう映っているのでしょうか?

長渕:うん。自分の10代と向き合いたいということなんです。今でも自分の中に10代があって、でもそこに背いてばかりの大人がいるんです、保身、うぬぼれですね。10代の頃はそんなことはなかった。歌うこと、生きることに純粋だった。だから彼女にフラれただけで、もう死んでしまいたいって思っちゃう。10代の声を聞くとね、大事にしまっていた10代にリンクしていく。彼らの声や姿に遥か何十年前の自分自身がいるんですよね。そこを大事にしたいんです。

ーー『いつかの少年』ですね。

長渕:いつかの少年、今でも少年、そのまんまですね。80、90歳になっても『いつかの少年』を歌っていきたい、いや歌うんでしょう、きっと。ルーツですもんね。

ーー悩みや想いに対する長渕先生の熱い言葉が、たとえ「アーティスト・長渕剛」をよく知らない世代であっても、心に突き刺さるんだと感じました。

長渕:「おれの10代はこうで、こんな失敗したんだけど」という話をしたくなるわけですよ。あの頃と何も変わらない、変わっちゃいけないよって。だから、彼らを見つめてると自信が沸いてきます。大事なものを思い起こさせてくれますから。それが自分の心から、身体から出る彼らに対しての言葉になってるんだと思いますね。……うん、かわいいですよ、ラジオにメール送ってくる連中たちね、ホント、かわいい。抱きしめてやりたいです。

ーーそこから枠を広げ、BS番組『ブチまけろ!炎の魂 - 長渕炎陣』も始まるそうですが。

長渕:10代に始まって、年齢を絞らない形で本当にガチで話をしてみたいと。「言っちゃいけない、やっちゃいけない」という括りをなくした中で、輪になって心の底から話をしていく。その中でテーマになったものを、僕の10代の魂の立役者であるギターを手にして、そいつらに歌ってみようかなと。そうしたときに彼らはどういう風に思うのかなと。

「西富士に立って、希望の刃をぶつけてみたら、富士はなんと応えてくれるだろうか」

ーー来年8月22日に『10万人オールナイト・ライヴ 2015 in 富士山麓』があります。記者会見やラジオで語られていた、“富士の西と東、表と裏”の話が興味深かったです。

長渕:勉強不足で凄く恥ずかしかったことなんだけど。僕らがよく知る富士の姿とは違い、東側は自衛隊の演習場でね、砲弾が撃ち込まれている。だから富士の裏側は穴だらけ。それが世界遺産になったんだ……と思いましたよ。これは、あまりクローズアップされてないことなんじゃないかと、ちょっと恐い気もしたんです。そして、ぐるっと廻って西側は打って変わって母のような笑顔で待ち構えている、見事なまでに綺麗な富士があるんですね。雨風ほとんどなく、天候も空気もいいし、東と西ではこんなに違うんだという二面性があったんです。今回は西富士に立って、東は銃弾だけど、西から愛溢れる10万人の声、希望の刃をぶつけてみようよ、そしたら富士は何と応えてくれるだろうか、それぞれの心の中に何が響くだろうか、ということをやらなきゃと思ったんです。

ーー富士が長渕剛を呼んだのか、それとも富士でなければいけない理由があったのでしょうか。

長渕:いやいや、おまえらだろ! 富士に向かわせたのは!(笑)。コンサートで全国周るとね、「剛、桜島から10年たったぞ、そろそろなんかやれよ」って聞こえるのよ。で、次は「なぜ、富士なんですか?」ってよく訊かれるんだけど、「桜島の次にどこに山があるんだよ、富士しかねぇーじゃねぇか! 俺もキツイんだから、おまえらも身体鍛えて絶対来いよ、一緒に山登るんだぞっ!!」って。だから、おまえらが企てたと言えるし、逆に長渕が企てたとも言える。俺が旗振らなきゃ、おまえら集まれないしな。でも、おまえらが集まらなきゃ、俺も旗振れないし、両方の理屈があるんです。

ーー富士ならではの演出、構想はあるのでしょうか?

長渕:富士の麓、10万人の観衆が最大の演出ですから。自然の風や虫の鳴き声に包まれ、星降る夜空を見上げたり。やがて朝が訪れ、霧が立ちこめ、そこから富士の頭が出て、東から登る太陽に向かって「いくぞーーー!」と叫ぶ、そういうイメージなんですよ、やりたいことは。

ーー10万人が拳を上げる、伝説が生まれそうで楽しみにしております。

長渕:みんなで作りだした巨大なエネルギーが何かを動かせるんじゃないかと信じているんです。けど、たかだか1回の音楽のコンサートではなくて、たった一夜の10万人の集結した人間がおりなす力だからこそ信じているんです、山が動くと。「いやー、すごかった」と言われるために、命懸けで生きてる気がするんです。「すごい」って言われるのはやっぱりすごいんですよ。「すごい」の三文字ね、それを色んな人に言わせたい。そこに集まる連中たちへ向けられる最高の3文字を僕はつくりたいんです。シンプルだよね(笑)。

(取材・文=冬将軍)

■リリース情報
『TSUYOSHI NAGABUCHI “ARENA TOUR 2014 ALL TIME BEST” Live! one love, one heart』
発売:12月20日
Blu-ray UPXH-20033 ¥9,980(税込)
DVD UPBH-20129 ¥8,980(税込)
【Disc1】
ARENA TOUR 2014 ALL TIME BEST < LIVE >
・Opening
・泣いてチンピラ
・勇次
・明日をくだせえ
・カラス
・シェリー
・西新宿の親父の唄
・逆流
・HOLD YOUR LAST CHANCE
・夏祭り
・俺らの家まで
・パークハウス701 in 1985
・順子
・青春
・Success
・情熱
・明日へ向かって
・しゃぼん玉
・RUN
・俺の太陽
・桜島 SAKURAJIMA
・Myself ~Ending

【Disc2】
SPECIAL FEATURES < 特典映像 >
本邦初公開。ロックンロール・ショーのさまざまな舞台裏を“ショート・ムービー集”として収録。

デジタル配信
『明日へ続く道』
iTunes
https://itunes.apple.com/jp/album/id946923139
レコチョク
http://recochoku.jp/song/S1001034598/

■ライブ情報
『長渕剛 10万人オールナイト・ライヴ2015 in 富士山麓』
2015年8月22日(土)静岡県 ふもとっぱら
START 21:00
http://nagabuchi2015.com/

141221_nagabuchi_asuhe.jpg
『明日へ続く道』

■SCHOOL OF LOCK!Saturday 長渕LOCKS
http://www.tfm.co.jp/lock/nagabuchi/

■オフィシャルサイト
http://www.nagabuchi.or.jp/

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