三代目JSBの躍進から見える、新世代EDMクリエイターの充実とは?

 そして三代目JSBは、これまで『冬物語』などミディアムバラードを冬の定番にしていたが、あえてEDMナンバーを選択。これに関しては、『S.A.K.U.R.A.』『R.Y.U.S.E.I.』『C.O.S.M.O.S. 〜秋桜〜』とリリースしてきた春・夏・秋の3枚のシングルのうち、明らかに頭一つ抜けた評価と結果を残したのが『R.Y.U.S.E.I.』である、ということが背景にあるのではないだろうか。

 CDセールスも『R.Y.U.S.E.I.』が最も多く、YouTubeの再生数でも「S.A.K.U.R.A.」が約400万回、「C.O.S.M.O.S. 〜秋桜〜」が約890万回であるのに対し、「R.Y.U.S.E.I.」は約1660万回(2014年12月20日時点)とダントツの支持を集めている。さらにこの曲は「第56回日本レコード賞」の優秀作品賞にもノミネート。明らかに代表曲としての立ち位置を獲得したのだ。

 というわけで、「O.R.I.O.N.」も「R.Y.U.S.E.I.」の続編的なナンバーとなっている。作曲を手掛けたのも、同じく「STY」と「Maozon」によるチーム。前にもこのチャート分析で書いたが、実はMaozonは同人音楽シーン出身のクリエイターだ。(参照:EXILEファミリーと同人音楽の「接点」とは? チャート1位の三代目JSB新曲から読み解く)。弱冠22歳。去年の今ごろはコミケで自主制作のCDを売っていた人が今年は作曲家としてレコード大賞にノミネートされているという、驚くほどのシンデレラ・ストーリーを歩んでいる。

 2014年は初開催の「ULTRA JAPAN 2014」も大きな成功をおさめ、EDMが完全に日本のシーンに根付いた一年だった。さらに、初のアルバム『Don't Wanna Be』を12月24日にリリースするbanvoxや、海外レーベルからリリースされた「GAMER」が話題を呼んでいるBUGLOUDなど、若手の日本人プロデューサーもメキメキと頭角を表している。

 三代目JSBの成功の背景には、そんな新世代EDMクリエイターの充実も伺えるのである。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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