>  > THE BOYS&GIRLSが持つ爆発力の理由

石井恵梨子が札幌シーンの“伸び盛りバンド”を分析

北海道ロックシーンから全国区へ 最注目の若手=THE BOYS&GIRLSの“パワーの源”を探る

関連タグ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
141202_boysandgirls_a.jpg

 怒髪天やブラッドサースティ・ブッチャーズ、イースタンユースなど、数々の有名バンドを輩出してきた北海道のロックシーンにて、新たな若手バンドが育ってきている。11月19日に全国デビューシングル『歩く日々ソング』をリリースした4人組・THE BOYS&GIRLSも、そんな若手バンドのひとつだ。結成3年のキャリアの中で、活動拠点である札幌を中心に月10本のハイペースでライブ稼働を行い、これまでに300本を越えるイベントに出演してきた彼らは、現在、北海道のみならず、全国各地のライブハウスでも名を挙げてきている。そんな彼らを育んだ北海道のロックシーンはどんな遍歴を辿ってきたのか。そして、THE BOYS&GIRLSの音楽性には、どのような影響が見られるのか。ライターの石井恵梨子氏が、北海道シーンの流れと、THE BOYS&GIRLSの魅力を解説する。(編集部)

「札幌って、いちジャンルにつき、ひとバンドなの。何かの真似してるヤツらは全部淘汰される」

 かつて、怒髪天の増子直純が地元について語った言葉である。80年代後半~90年代初頭にかけて、ブラッドサースティ・ブッチャーズ、イースタンユース、DMBQ、ロマンポルシェ。など個性豊かなバンドを次々と輩出してきた札幌のロックシーン。人の真似をするなという精神は札幌に限らずどんな表現者にも備わっているものだが、札幌シーンのすさまじいオリジナリティに関しては、もうひとつ、東京に対する距離感が作用していたようだ。以下、再び増子の発言。

「バンドブームなのに、中央のメディアに注目されることはない。東京のバンドを見ると、札幌のほうが絶対オリジナルで面白いと思うんだけどね。だったら東京を相手にするより、まず仲間の度肝を抜いてやれと。新曲作って『うわ、やられた!』って言わせたい。『やられた、負けねぇぞ』って気持ちで向こうも新曲を作ってくる。それを繰り返すことで切磋琢磨されたよね」

 怒髪天を筆頭とする「アクの塊」のようなバンドたちは、その後、90年代後半から00年代にかけて次々とブレイクしていく。どれだけ存在が大きくなり慕ってくれる後輩が増えようとも、威風堂々、我が道をゆくオリジナリティを貫けるところが道産子バンドの根本的な強さだろう。その血はおそらく、現在も連綿と続いている。

「最初にパンク聴いたとき、まず自分たちでやれ、っていうのを感じた。お前らでやれって。でもね、パンクって、たとえばピストルズとかクラッシュ聴いて、それのコピバン組んじゃったら終わりなんだよ」

 こちらは同じく北海道のバンド、爆弾ジョニーのりょーめーの言葉である。オリジナルであれという根幹は増子とまったく同じだが、90年代前半に生まれた彼らの音楽は、かつての札幌パンク・シーンとは大きくかけ離れたものだ。ワシントンD.C.を筆頭とするUSハードコアの影響が強かった先輩バンドとは異なり、若い彼らはブルーハーツ~銀杏BOYZ直系、いわば東京発の国産ロックンロールの影響を強く受けている。東京に対する地方というコンプレックスのない世代、洋楽から切り離されたガラパゴス世代と言えるわけだが、それはもちろん、札幌に限った話ではない。

 ブルハ直系のストレートなパンクロックを鳴らすバンドが全国から登場したのは今から10年前。「青春パンク」と呼ばれた第二期バンドブームの頃である。その中で一際目立つ存在だったゴーイング・ステディは、銀杏BOYZになってさらに深化。自分の暗部や恥部をさらけ出す峯田和伸のスタイルは、「カッコ悪いことはなんて格好いいんだろう」という逆説的魅力を放つことになる。それ自体は悪ではない。ただ、ロック=冴えない連中の必死の悪あがき、というようなイメージが定着してしまったことも事実で、このたび映画化された漫画『日々ロック』も、登場人物は元いじめられっ子に元ひきこもりばかり。彼らがガムシャラに脱ぎ、ヤケクソに叫び、みっともない姿をさらけ出すことでなんとかロックンロールが成立する。それが00年代以降の風潮なのだろう。ロックに元気がない、と言われるのも当然だ。

 そこで再び爆弾ジョニーだが、若き道産子ロックを代表する彼らに、屈託、という二文字は見当たらない。札幌を拠点に活動しているバンドTHE BOYS&GIRLS(以下ボイガル)もしかり。フォーキーなメロディとまっすぐな日本語詞はゴイステ~銀杏を彷彿とさせるが、「今に見てろ」と逆襲するような負のエネルギーは皆無。さらに言うなら爆弾ジョニーは「ただでさえカッコいい僕 カッコつけてさらにカッコよくな~る」(「P.P.P」)とラップし、ボイガルは「俺たちが世界で“イットー”イカしてるってことだよな」(「すべてはここから」)と歌い上げる。このあっけらかんとしたポジティヴィティは、明らかに銀杏フォロワーとは一線を画すものだろう。

 卑屈ありきじゃない。もっと野放図でおおらかで、本人たちが誰よりもバンドを楽しんでいる、その楽しさが気持ちのよい爆発力を生んでいる。そんな若手が増えたのが現在の北海道シーンだ。「ロックに元気がない」時代の「必死の悪あがき」とは対極で、ここから俺たちがロックンロールで世の中を変えていくんだ、という根拠なき自信のほうが強い。明るく眩しく力強く、子供でもわかるくらいのストレートなロックンロール表現。それは明らかに時代を無視したものであり、バンドブームを完全にスルーして独自路線を邁進していた、かつての札幌シーンにも存在した道産子特有のパワーだと思う。

 「いちジャンルにつき、ひとバンド」というよう独創性はもはや望めない。あれこれミックスして前例なき音を模索するよりも、温故知新で音楽を選びとっていくセンスが今どきの表現者には求められる。だからボイガルの音楽は決して新しくないのだが、真似はしないぞ、という心意気なら感じられるのだ。音楽性ではなく「俺」で勝負、顔や表情やドキドキする心臓の鼓動だけで、どれだけ面白いオリジナルの存在になれるのか。打算やヒネリといったせせこましさではなく、ドーンと大きな「人間力」で勝負する。それが今の道産子バンドに受け継がれたDNAなのだろう。ボイガルの「歩く日々ソング」を聴きながら、このおおらかさは間違いなく札幌のバンドだなぁと思う。怒髪天やイースタンユースとは似ても似つかないサウンドだが、やっぱり続いているのだなぁと、なんだか嬉しくなってしまうのだ。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

141202_boysandgirls_j_tower.jpg

THE BOYS&GIRLS『歩く日々ソング(タワーレコード限定発売・完全生産限定盤)』

■リリース情報
全国デビューシングル
『歩く日々ソング』
発売:2014年11月19日
タワーレコード限定発売・完全生産限定盤
NCS-10081 ¥306(税込)
<収録曲>
1.歩く日々ソング

北海道限定発売・完全生産限定盤
NCS-10082 / ¥306(tax in)
<収録曲>
1.歩く日々ソング

141202_boysandgilrs_j_h.jpg

THE BOYS&GIRLS『歩く日々ソング(北海道限定発売・完全生産限定盤)』

■ライブ情報
『THE BOYS&GIRLS企画「ノロシヲアゲロ3」~札幌編~』
2015年2月28日(土) 札幌COLONY

『THE BOYS&GIRLS企画「ノロシヲアゲロ3」~東京編~』
2015年3月28日(土) 下北沢BASEMENT BAR

■オフィシャルHP
http://www.theboysandgirls.jp/

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版