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市川哲史の「すべての音楽はリスナーのもの」第5回

“オリジナルの歌声”には誰も勝てない 元ジャーニーのS・ペリーがMLB球場を熱狂させたワケ

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 球場にMLBを観に行く度に、試合前から終了後まで音楽で溢れまくってるスタジアムを羨ましく思う。NHKBSのメジャーリーグ中継をたまたま観ていて、突然聴きおぼえのある洋楽(←当たり前か)が流れて嬉しくなった人も少なくあるまい。

 たとえばフェンウェイ・パーク@ボストンでは8回裏、レッドソックスの攻撃前にニール・ダイアモンドの“スウィート・キャロライン”が流れ、観客が大合唱で応じるのが1997年からのお約束である。未だボストンはケネディ家の城下町なのか。

 たとえばヤンキー・スタジアム@ニューヨーク。まず試合前、ヤンキースの先発ラインナップが発表される際には『スター・ウォーズ』の“インペリアル・マーチ”——そう、あのダースベイダーのテーマが憎々しげに鳴り響く。金に全く糸目をつけず、他球団の主力だろうがキューバの至宝だろうが日本の四番打者だろうがすべて強奪するその手法から、宿敵レッドソックスのオーナーに「悪の帝国」呼ばわりされたヤンキースは、「ならば」と自ら帝国軍を名乗り、アンチの神経をより逆撫でし続けているわけだ。

 また試合終了と同時に、ヤンキースが勝つと雄雄しいフランク・シナトラ・ヴァージョンの、負けると切ないライザ・ミネリ・ヴァージョンの“ニューヨーク・ニューヨーク”が流れていた。あ、ミネリからの猛抗議により、現在では勝っても負けてもシナトラの“ニューヨーク×2”なのだけれども。そりゃそうだろう。

 にしても全30球場に共通して言えるのは、流れるBGMの大半が70〜80年代の楽曲であること。「いまどきのサウンド(失笑)」も多少は選曲されているが、それこそザ・フーにガンズンにゲイリー・グリッターにクイーンにサヴァイヴァーにクール&ザ・ギャングが1試合の間で聴けるのだから、明らかに偏っている。

 とはいえ観客は40代以上のシニアだらけでは当然ないわけで、音楽とは時空を超えられる不思議なポップカルチャーだとつくづく思う。

ジャーニー「ドント・ストップ・ビリーヴィン」の霊験

 今年のワールドシリーズは、カンザスシティ・ロイヤルズvsサンフランシスコ・ジャイアンツだった。ワイルドカードから勝ち抜いてきた敗者復活チーム同士の対戦で、NPBで喩えれば広島と日本ハムの日本シリーズみたいなものか。全国区でない両者だけに、毎年恒例の全米TV中継は史上最低視聴率を見事に更新したようだ。

 さて私が今回とても気になっていたのは、その勝敗ではない。

 ジャーニーの行方、である。

 TOTOやエイジアやスティックスなどと並び70年代末から80年代前半、豪華で達者なアンサンブルと情緒的で単純明快なメロで日米のヒットチャートを席巻した、<産業ロック>の代表選手だ。日テレ系の朝の情報番組『スッキリ!!』の主題歌“お気に召すまま”は、そのジャーニー1980年の全米23位ヒット曲だったりする。また83年全米8位を記録した“セパレイト・ウェイズ”も、TBSのステゴロ報道番組『サンデージャポン』で芸能人の破局ネタで必ず流れるなど、実は日本人には馴染み深い洋楽バンドなのである。

 とにかく当時の大学生は皆、サザンオールスターズとAORと産業ロックを聴いてたのではないか。ちなみに産業ロックとは身も蓋もない呼称だが、現在なら<ファスト・ファッション的ロック>と言えばニュアンスが伝わるだろうか。

 さてジャーニーはサンフラシスコ出身ということもあり、81年の全米9位ヒット曲“ドント・ストップ・ビリーヴィン(以下、DSB)”は、ジャイアンツのアンセム・ソングだ。同点もしくは劣勢で8回裏の攻撃を迎えると、この曲が「あきらめないで信じろ」と力強く流れ、本拠地・AT&Tパークの観衆が大合唱で応えるのである。ちなみに優勢の場合は、78年全米最高68位ながらサンフランシスコの街の灯を唄って愛された“ライツ”が、場内をさらに煽る。そしてその霊験はあらたかで2010年に公式応援ソングに採用して以来、ジャイアンツは2010年に12年と、2度もワールドチャンピオンの座に輝いてきた。おお。

      

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