高速ロックシーンの源流=ヒトリエが提示する、次の一手とは?「今ある武器を全部出した」

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 4人組ロックバンド、ヒトリエが1stフルアルバム『WONDER and WONDER』をリリースした。

 フックの強いメロディと刺激的なフレーズの応酬が速いスピードで繰り広げられる曲調は、彼らのユニークなセンスを大きく反映させたもの。特にここ最近の邦楽ロックシーンでは高速のテンポでオーディエンスを煽り興奮に繋げるタイプのバンドが多く登場しているが、実は彼らはその“源流”の一つと言っていい存在だ。もともとボーカロイドを用いて楽曲を発表していたwowakaを中心に、ネットや同人シーンで活躍していた腕自慢のプレイヤーが集まった4人組。彼がボーカロイド時代に発表してきた楽曲にその要素が色濃く現れていた。
 
  今年1月にメジャーデビューを果たした彼ら。紆余曲折の末に完成したというアルバムには、そこからのバンドとしての成長が刻み込まれた作品でもある。一体何があったのか。そして今年バンドシーンの一大トレンドとなった「高速四つ打ちダンスロック」に対して彼ら自身はどう思うのか? 語ってもらった。

「顔が見える音楽をやろうと思った」(wowaka)

――まず改めて、wowakaさんはどういう動機でバンドをスタートさせたんでしょうか。

wowaka:最初にあったのは、自分で歌いたいということですね。2009年からボーカロイドを使って曲を作りはじめて、2011年にそれをまとめたアルバムを出して。そこで一つ落ち着いちゃったような感じがあった。同じことを続けるより、自分が演奏して、歌って、ライヴをする。そういう活動をちゃんとやりたいと思った。顔が見える音楽をやろうと思ったんです。そもそも自分が好きだったのがそういうバンドだったんですね。メンバーそれぞれの人間性も含めて音にパッケージされてるような感じが好きだったんで。「バンドをやりたい」というのが素直にありました。

――皆さんは、ヒトリエっていうバンドにどういう可能性を感じたんでしょうか。

イガラシ:僕が思ったのは、日本の今のバンドの中で自分が一番好きな音が鳴らせるバンドになれるっていうことですね。彼が発表していた「アンハッピーリフレイン」とか、自分も好きで聴いてきた曲だったし。「バンドやろう」って言われる前から「これは俺が弾くべきだ」と勝手に思ってたというか(笑)。

ゆーまお:僕の視点で言うと、そもそも僕自身がボーカロイドのファンで。ただ、同人音楽にしてもボーカロイドにしても、ドラムは打ち込みのものが多いんです。それはそれで良いんですけれど、何か手伝えることがあるんじゃないかなと思ったんですよね。自分が演奏することで可能性が広がるんじゃないかと思った。それがそもそもの始まりです。で、ヒトリエが始まった頃は僕も自分のバンドを含めていろんなバンドを掛け持ちでやっていて。でも、一番バンドを世に広めていきたいという意志を発信していた男があの人だった。というのもあって、ヒトリエを選んで今に至る感じです。

――シノダさんは後から誘われて参加したんですよね。

シノダ:当時から「なんか変な曲を作る変な存在感がある人がいるなぁ」と思ったんですよ。で、ライブを始めたときも楽しそうだから俺も混ぜてくれねぇかなぁって思っていて。誘われて嬉しかったですね。このバンドだったらもっとムチャクチャできるだろうなって思ったという。

――ヒトリエの曲はすごくテクニカルですよね。手数も多いし、曲構成も複雑で。プレイヤーとしてはみなさんどう感じているんでしょう?

シノダ:ここ2~3年はずっと「難しい」しか言ってないですね(笑)。「この曲は難しいな、この曲も難しいな」って。なんとか乗りこなしたいとは思ってますけど。

イガラシ:ただ、ベーシストとしてはすごくシンプルなんですよ。ドラムもギター2本も細かく構築されてるから、真ん中でどっしりしてた方がちゃんと曲になる。ベースっていう楽器の機能を考えるようになりましたね。

ゆーまお:僕自身は、みんなで速いキメをキメたり速いリズムを取ったりすること自体は特別難しいと思ってないんですよ。そういう攻め方をする演奏スタイルだということで。速かったり忙しかったりするのは、さして難しいことではないと思ってます。

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