KinKi Kids、チャート首位曲の“手堅さ”とは? グループとソロ活動のバランスを読む

 作詞は前作「まだ涙にならない悲しみが」に続いて松井五郎が、作曲は水樹奈々「禁断のレジスタンス」なども手掛けた加藤裕介が、編曲はこれまでもKinki Kidsの数々の楽曲のアレンジを担当してきた鈴木雅也が手掛けている。ヨーロピアン・トランスを彷彿とさせるシンセの音色には今っぽいアレンジセンスも感じるが、基本的には「手堅い」印象が強い楽曲だ。

 失恋の切なさや苦しさを「鍵のない箱」に喩えて歌う歌詞も、マイナーキーのメロディも、脈々と日本に根付いてきた歌謡曲の伝統を受け継ぐようなテイスト。気鋭のミュージシャンを次々と起用するSMAP、新作アルバムで「デジタル化」を推し進めた嵐と比較しても、現在のジャニーズ系のキャリアあるグループで最も保守的な音楽性と言っていい。

 また、12月にリリースされるニューアルバム『M ALBUM』は前作『L ALBUM』と同じく2枚組の仕様となっているが、そのうち1枚はリアレンジによるセルフカバーを収録した内容。つまり過去からの流れを今に繋げるような形になっているわけで、これも方向性としては「保守」と言っていい。

 おそらく、堂本剛、堂本光一それぞれがソロで自身の世界観を旺盛に追求しているからこそ、本人や周囲にとっても、ファンにとっても、Kinki Kidsでの安定路線とバランスがとれているのではないだろうか。

 このままアルファベット順のナンバリングが続くとすると、「Z ALBUM」まであと13枚。このままのペースでリリースされると仮定するならその頃には二人は50代となっている可能性も高いが、その頃までグループの人気は継続しそうな予感もする。改めて前人未到な二人だ。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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