松任谷由実、竹内まりや、中島みゆき……JUJUが歌う名曲カヴァーはなぜ特別な響きを持つのか?

 『Request Ⅱ』では12曲すべてで違うサウンド・プロデューサーが立てられており、その超豪華な顔ぶれによる高いクリエイティヴィティも込みで魅力の高い作品だ。

 とくに僕が注目したのは、JUJU自身のルーツ・ミュージックに近いところにいるクリエイターのアレンジだ。JUJUのJAZZアルバム『DELICIOUS』シリーズでも手腕を発揮している島 健は、今回は「誰より好きなのに」(古内東子)を担当。ピアノとストリングスを中心にした、やはりジャズ寄りのサウンドではあるものの、ポップスとしても充分に聴けて、それでいて静謐な演奏は、大人のせつない恋愛を唄うヴォーカルの良さを存分に引き出している。

 それから日本のクラブ・シーンを牽引してきた大沢伸一がプロデュースした「Can’t Stop Fallin’ in Love」(globe)。エレクトロな意匠がほどこされ、なんと鳥のさえずりまで聴こえるアレンジは、J-POPにおいては先鋭といえる仕上がりである。また「情熱」(UA)のオリジナルは、それこそ90年代半ばのJ-POPシーンに突き刺さったクラブ系サウンドだったが、今作でこれを手がけた玉井健二は原曲のビート感を現代風に蘇らせていて、それをJUJUは見事なリズムのこなし方でもって唄いきっている。

 そのほか、本作のプロデューサー陣は、時間と巡り合いという観点でも面白い。「ANNIVARSARY」をプロデュースしている武部聡志は、まさに松任谷由実と長年にわたってサウンド面で関わってきた才能。また「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」(YEN TOWN BAND)は亀田誠治によってアレンジされているが、同曲を書き、オリジナルをプロデュースした小林武史は今作で「Miss You」(今井美樹)のアレンジを手がけている。もしかしたら、探せばまだ何かあるかもしれない。そうしたJ-POPの歴史の交差が垣間見れるのもお楽しみのひとつだ。

 JUJUの確かな歌唱力が楽しめる本作は、唄い手としての彼女の魅力のひとつの側面をクローズアップするものだ。そこにはシンガーとしての信念が見えるし、矜持も感じる。それにしても、こうしたクールなアプローチが選択されているのはなぜなのだろう?筆者は、今春発売された5作目のアルバム『DOOR』からの先行シングルとなった『Hot Stuff』の激しいビートとJUJUのシャウトに大いにそそられたクチだし、先頃リリースされたシングル『ラストシーン』のパッショネイトな歌声だって熱量が高い。彼女は一般的にはミディアム/スロー系のバラードのイメージが強いものの、激しさを全面に出したヴォーカルでも充分にパワーを発揮するシンガーなのだ。

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