アイドルはなぜ“恋愛禁止”を掲げるのか 姫乃たまが自身の体験から見いだした答えと不安

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地下アイドルとして活躍する姫乃たま。

 ファンが結婚ラッシュです。私のファンは30代後半から50代の方が中心なので、彼らの結婚はごく自然なことなのですが、それにしてもこの気持ちはなんでしょう。現実に引き戻されたような感覚になるのです。

 私はアイドル現場にいるファンほど、恋人に適した人たちはいないと思っています。フットワークも軽く、ファン同士でコミュニケーションをとりあう社交性もあり、何より女の子のことをよくわかっているからです。「平日18時に会いに来て!週末は地方ね!移動は別々で!」そんな無茶にアイドルファンは応えるのです。同じことを言ったら多くの恋人は、何言ってるんだという顔をするに違いありません。

 ただし、この話をすると、いつも猛烈に反論してくるのがファン本人たちなのです。反論の内容は様々ですが、最も多かったのが、私生活で接触するアイドル以外の女の子には、その力を発揮できないという意見でした。

 私生活に別の顔を持っているのは、アイドルだけでなく、ファンも同じようです。ファンがアイドルに夢を見ているように、アイドルもまたファンに夢を見ているのです。たしかにヲタ芸とか掛け声とか、立派なパフォーマンスですよね。時々、客席の方が声大きいですもん(売れてないため、狭い会場でライブをするとよく起こる現象)。

 ファンの人をこんな風に思えるのは、ずっとファンの人に恵まれているからでもあります。地下アイドルの活動をしていくうえで大事なことは、ほとんどファンの人から教わりました。彼らが身をもって教えてくれた中でも、最も基本で重要だと思うのは、アイドルとファンの間に必要なのは信頼だということです。

 私は数年かけてその信頼の中に、恋愛禁止も含まれていると解釈しました。事務所に所属していないので、恋人を作って公にしても誰からも咎められません。でもそうしなかったのは、アイドルが恋愛してはいけない理由を自分なりに見つけたからです。

 実際ファンの人はあまり私の恋愛に興味ないのですが、だからといって、公の場で恋愛をしていると言ってはいけません。それは私が恋愛をしないと言い張ること、ファンはそれを信じたふりをするうえに、私とファンの地下アイドルごっこが成り立っているからです。それはエンターテインメントを楽しむための、信頼です。

 しかし、何をどうしてもファンとうまくいかない場合もあります。ファンの行動によって悩まされているアイドルさんもたくさん目にしてきました。そういう時に自分を傷つけたファンを裏切るという意味で、恋愛に走ることがあります。反対に、運営とうまくいかなくて、優しくしてくれるファンとつい恋愛関係に陥ってしまうということもあります。

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