乃木坂46は今後どこに向かうのか? レイチェル×さやわか×香月孝史が徹底討論(前編)

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「生駒さんは兼任を『外からプロの空気を引っ張る』という気概でやっている」(香月)

――一方で、乃木坂46が「ライバルとして機能していないんじゃないか」という議論もあります。特に、今年2月に行われたAKB48の『大組閣祭り』で、グループの1つとして組み込まれ、生駒里奈がAKB48と兼任になったり、松井玲奈がSKE48から兼任メンバーとして加入するなど、外側からの刺激によって、話に出たような「ゆったり感」が変わってきているかもしれません。

香月:乃木坂46は、これまで基本的にAKB48グループとは交わらずにきましたが、『大組閣』で交換留学があった。一定数のファンは「そろそろ来るかもな」という覚悟は持っていたものの、それなりに拒否反応も出ていたことを覚えています。そして、生駒さんの兼任についても、ファンから「生駒さんはただでさえ乃木坂46で大きいものを背負っているのに、さらに重荷を背負わせるのか」という意見がありましたが、生駒さん自身はそれをポジティブに捉えている。また、生駒さんの言動を見ていると、「まだ世間に打ち出していくにあたって、自分たちのパフォーマンスは高い水準のものではない」という感覚を持っているようで、だからこそ「自分が外からプロの空気を引っ張ってくる」という気概で兼任活動をしているようです。

さやわか:僕も「その個性が外に伝わらなければ意味がない」と思っています。しかし彼女たちが持つゆったり感は、「私たち、ゆったりやってるんです」と言って見せつけるような出し方じゃないんですよね。「ゆったりやってます」「清楚系です」と明示的に打ち出していくやり方のアイドルグループもあると思うんですけど、乃木坂46はそうではない。だからこそ、最初に出てきた時から、「こんな穏やかなグループがライバルと言えるの? ライバルってもっと頑とした対決姿勢があるもんじゃないの?」と思わせるところがあった。しかし、結局のところそういう意味での“ライバル”ではないわけですね。逆張り的なコンセプトを打つという意味でのライバルなわけだから、だから、何とかしてそのゆったり感を派手に見せつけることなく、お客さんに感じ取ってもらわないといけない。そこには難しさはあります。セールス的には徐々に伸びていますし、知名度も少しずつ広がっているのですが、やはり単純に「AKB48グループ」というカテゴリの中で捉える方もまだまだ多いですよね。

レイチェル:たしかに、一般の人から見たら同じようなものに見えるかもしれませんね。

さやわか:同じグループ内のものとして見られてしまうと、地味な印象を与えてしまいがちですよね。そこで、『大組閣』に組み込んだり、AKB48ファンが喜ぶような路線の楽曲を作ったりして迎合する姿勢を見せたりもするんですが、そうすると今度は、グループの個性が変わってしまうということを懸念する人も出て来るというジレンマがあります。

香月:「公式ライバル」というような言葉で見る場合、多少キャラは違ってもAKB48と同じベクトルを目指していれば分かりやすいのですが(笑)。例えば、AKB48に姉妹グループとしてSKE48が誕生したときは、競合するという意味でのライバルにいずれなっていく存在として捉えやすかったと思うんです。しかし乃木坂46は、ライバルと銘打ちながら、楽曲の方向性や、舞台へのアプローチなど、ベクトルを違う部分に向けることで存在感を見せてきました。

――“AKB48っぽい楽曲”という話が出ましたが、逆に“乃木坂46っぽい楽曲”を説明するとどういう表現になるのでしょう。

香月:象徴的なのは『君の名は希望』なのかな。

レイチェル:まさにそうですね。この曲で乃木坂46を知った人も多いと思います。

さやわか:ミドルテンポで、鍵盤とストリングスを多用した曲で、サウンドも散らかっていない。しっかりしたポップスにしようとしたら2回転くらいして80年代から90年代初頭のアイドルのような王道路線に着地したような楽曲という感じでしょうか。

香月:「王道アイドルソング」というと、AKB48が今のスタンダードになるのだと思いますが、乃木坂46の曲は今のアイドルシーンの王道、という意味ではなく「王道ポップス」という捉え方が一番しっくりくるのかもしれないですね。

さやわか:『ぐるぐるカーテン』、『おいでシャンプー』といった初期のシングル曲はフィル・スペクター調あるいはモータウン調のようなことをやっていました。ソニーが手掛けるアイドルということで、まずコンセプトの一つとして、音楽に重きを置いていたがゆえと思うんですけど、いわゆる楽曲派アイドルとは少し違って、もっと単純に、「普遍的で良質なポップス」を打ち出したかったのだと思います。ジャンルの選び方としてはウォール・オブ・サウンドやフレンチポップスをオシャレにやっていて、最初は渋谷系の手法に似ていると思いました。でも、「あえて」という押し出し感はないので、楽曲派だけに届くという狭い間口にはなっていない。そこが乃木坂46の特徴であり、面白いところだと思います。『君の名は希望』は、そうした路線の象徴といえる曲でしょう。

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