THE PRIVATES、延原達治が語るバンドとロックンロールの30年「明日もやりたい、というのが一番」

「プライベーツは全員ロック・ミュージシャンであると同時に、すごいロック・ファン」

--そのへんは、きっと感じ取れる人は多いと思います。「最後まであきらめるな」はその象徴じゃないですか。それと、そうだ、最初に聞かなきゃいけなかったんですけど、吉田(学/key)さんっていつから復帰してるんでしたっけ。

延原:ああ、お吉さんはね、正式にバンドに復帰して俺はやるぜと言ったのは、2年前ぐらいかな。今もフルタイムでは参加できないんだけど、時間を作れる時には参加できるし、今回のレコーディングは曲を作ってリハーサルの段階では全部一緒に作ったんで。

--ジャケットに映った5人の顔を見て、おおっ!と思う人も多いと思うんですよ。特に古いファンは。

延原:俺たち自身も、気持ち的にうれしくて。バンドを続けられなくなっちゃったんだという話をした時(1991年に脱退)にも、いつか50ぐらいになった時にもう一回できるように“いつでも準備して生きていくからさ”っていう話をしたんだけど、それが本当に実現してみると、当たり前のようだけど、心のどこかでドラマチックだなと思う気持ちもあったりして。お吉さんも近くでバンドをずっと見てたし、会社の倉庫に楽器を置いて、俺だけ参加できなくて悔しいぜとか思いながら弾いてたらしいんで。だから戻ることになった時にも、メンバー4人も“俺たちのルールだからいいんだよ”って言ったんですよ。20代の頃で、まだ俺たちのルールが確立されてない頃だったら、できる時だけバンドに参加するなんて甘い考えは許さないぜって言っただろうし、本人もそう思ったからやめるしかないと思ったんだろうけど。もう今は俺たちは俺たちのルールがあるんだから、それでいいんだよって。いつも5人のステージが見たいんだというファンの人には申し訳ないけど、でも4人でやっても5人よりいいサウンド出してみせるぜって思ってるから。とってもうれしいです、5人でできて。
--延原さんにとってメンバーって何ですか? 家族ですか、戦友ですか。

延原:何だろうね? 家族とも違うし。でも誰かひとりでも欠けるとバンドはできないし、ひとりが調子悪いとみんなが調子悪くなっちゃうし、ひとりがステージの進行を勘違いしてると全部が思った通りにいかないとか、不思議な関係だと思う。仲いいし、すごい友情は感じてるんですけど、時間が長いぶんそれと同じぐらい鼻につくこともあるし。

--あはは。そうですか。

延原:ほんっとにこのヤロウは完全になめてるなとか、一回白黒はっきりさせてやろうかとか、全員が思ってると思う(笑)。仲がいいのと同じぐらい、あのヤロウだけは許せねぇというのがあってさ。そういうところを言葉にしないで我慢してたりとか、でも我慢にも限度があるんだよって、バーンとぶん殴るとかさ(笑)。おかしいね、バンドってね。

--今回の作業中には、さすがにそれはないですよね(笑)。

延原:いや、よくあるよ(笑)。スタジオに来ても針のむしろみたいで嫌だろうなとか、そのうち次は俺の番になるだろうな、とかさ(笑)。でもね、バンドをずっとやってると、時間がたてばたつほどすごく面白くなっていくんですよ。音楽のことは多少なりとも理解が深まっていくから、一番最初にバンドで集まった時には踏み込めなかった、ディテールの部分までわかるようになったりするから。人間関係の濃さのいい面も悪い面も、その音楽に添加できるのも楽しいし。あと俺たちプライベーツは全員ロック・ミュージシャンであると同時に、すごいロック・ファンで、ストーンズ、ドアーズ、フー、クラッシュ、ラモーンズとか、ロックバンドのいろんな伝説を本で読んだりビデオで見たりして“ワオ!すごいな”と思ってきて、それと同じレベルではないけれど、曲がりなりにも長い間ロックバンドを続けてると、そういう伝説の1ページが“俺たちにとってはこういうことだよな”とか、わかる時もあるから。

--プライベーツ自体がもはやひとつの歴史ですから。このアルバムが、いろんな世代に拡散されることを願ってます。

延原:ロックンロールに興味がある人は、カバーのほうも楽しめるだろうし、オリジナルのほうもけっこういい曲が揃ってるぜという感じで。もうけっこういろいろ知ってるよという人には、どうだいこういう感じ? 認めてくれよ、という感じかな。

(取材・文=宮本英夫)

■リリース情報
THE PRIVATES 結成30周年記念オリジナル・アルバム『Les beat hi-fi mono』
発売:2014年10月1日(水) 
価格:¥3,000(税抜) 2枚組(Disc1:オリジナル楽曲/Disc2:50S-60S洋楽カバーセッション)
【Disc1 全13曲収録】
“Les beat” GRAND-FROG STUDIO Session
M1「エレベーターNo.9」 M2「ONE MORE TIME」 M3「バビロンの歯車」 M4「DOGGIN' AROUND」
M5「キッスを、もう一度」 M6「リメンバー」 M7「どこかにときめき」 M8「ブギウギ一晩中!」 
M9「GAKKO SHUFFLE」 M10「あいつはさかさま」 M11「誰もいない街」 M12「君が君に」 
M13「最後まであきらめるな」

【Disc2 全10曲収録】
30th Anniversary Session Special R&B Hits,more R&R Greats
01.「THE MEMPHIS TRAIN」 オリジナル:Rufas Thomas 〈Guest〉Organ:Dr.kyOn
02.「I'M READY」 オリジナル:Fats Domino 〈Guest〉Guitar:花田裕之
03.「BLACK NIGHT」 オリジナル:Arthur Alexander 〈Guest〉Guitar:仲井戸“CHABO”麗市/Harp:オカモトショウ(OKAMOTO'S)
04.「ROLLIN' STONE」 オリジナル:Muddy Waters 〈Guest〉Vocal:柴山“菊”俊之 /Harp:甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)
05.「DONNA」 オリジナル:Ritchie Valens 〈Guest〉Guitar:下山 淳
06.「HEART BEAT」 オリジナル:Buddy Holly
07.「I FEEL GOOD」 オリジナル:Benny Spellman 〈Guest〉Guitar:真島昌利(ザ・クロマニヨンズ)
08.「KOKO JOE」 オリジナル:Don&Dewey 〈Guest〉Vocal&Guitar:Takashi "Mr.PAN" Manabe(THE NEATBEATS)/Vocal:Dai "Mr.Gully" Ura(THE NEATBEATS)
09.「MOJO WORKOUT」 オリジナル:BOBBY LONG&HITS SATELITES 〈Guest〉Bass:岡本雅彦 /Vocal:オカモトショウ(OKAMOTO'S)/Drums:オカモトレイジ(OKAMOTO'S)
10.「WANG DANG DOODLE」 オリジナル:Howlin' Wolf 〈Guest〉Guitar:加藤“Yotchan”義明(Ex.村八分)/Harp&Vocal:チバユウスケ(The Birthday)

■スペシャルサイトURL:http://wmg.jp/privates
■オフィシャルHP:http://www.privates.jp/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる