cali≠gariはいかにしてV系シーンに一石を投じたか? 音楽性の進化とバンドの在り方を考察

ヴィジュアル系ロックバンドとしての問題提起

 「現在と昔のヴィジュアル系は違う」と言われることがある。音楽とともに、自己表現の一つとしてのメイクだったものが、ブームと時流により、先ずメイクをすることが前提とされ、音楽が二の次になってしまった面は否めないだろう。「ヴィジュアル系をやりたいから音楽を始める」ことは、きっかけとして悪いことではないが、肝心の音楽が軽視されてしまったら本末転倒である。

 La' royque de zavy(ラ=ロイク=ド=ザビ)というバンドがいる。cali≠gariの覆面バンドだ。彼らはこのバンドを通して、そうした“上辺だけのヴィジュアル系”を皮肉っている。「どこかで聴いたようなワンパターンなメロディーと楽曲構成」「横文字で誤魔化した意味のない歌詞」「スカスカのサウンド」「お世辞にも上手いとは言えない演奏」などの特徴を打ち出していて、言うならば「一般層が持つヴィジュアル系に対する偏見」を完全に体現したバンドだ。しかし、そこにあるものは茶化しや批判というよりも、見た目や形式ばかりが持てはやされ、時にそれが誤解を招きやすいこのシーンに対する問題提起である。

 彼らの問題提起はそれだけに収まっていない。2011年に発売されたシングルに『#2 今、何故CDは売れないのか? 編』『#2 今、再結成ブームを考える編』というタイトルがある。通常のシングル楽曲に加え、音楽シーンに問う大きな挑戦的テーマの討論会を収録したものだ。前者は「ジャケット含めてアーティスト作品」といった作り手の表現手段、ユーザーにとってはコレクター要素、アイテムとしての所有欲を満たす物品価値としての作品にこだわる彼らしいテーマでもあり、後者は自ら再結成したバンドであるがゆえの自嘲とも言える内容である。

cali≠gari/「マネキン」

 cali≠gariのこうした活動を見ると、自分たちを表現するとともに、音楽本来の楽しみ方や奥深さをリスナーに提示していることが伺える。いくら人気やチャートを賑わせたとしても、リスナーやシーンとともに成長して行かなければ意味がないーー今や誰もが忘れがちなアーティストとしての役割や矜持を、cali≠gariは思い出させてくれるのだ。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログTwitter

■ライブ情報
『cali≠gari 20th Caliversary"2013-2014" 最終公演
第7期終了 - To say Good bye is to die a little -』

9/27(土)日比谷野外大音楽堂
【OPEN】17:15【START】18:00
【チケット】
※3歳以上チケット必要
良心席(指定席) ¥6,000

【一般発売】8/30(土)
チケットぴあ (Pコード 238-790)
ローソンチケット (Lコード 77380)
e+

【問合せ】
DISK GARAGE
050-5533-0888
(平日12:00~19:00)

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