嵐・櫻井翔はなぜラッパーになった? その音楽的ルーツを紐解く

 ラップにはフロウ(節回し)、ライム(韻)、リリック(詩)といった要素があるが、櫻井のラップは昨今流行りの、いわば徹底的にアメリカナイズされた洋楽的なスタイルではない。日本語を比較的はっきり発音し、俳句のように言葉を当てはめていくタイプで、90年代に興隆を極めた日本語ラップのエッセンスが色濃い。トリッキーではないが母音を使って堅実に韻を踏んでおり、とても聞き取りやすく、しかも強いメッセージ性を持っている。言葉の選定もスマートだ。そういったスタイルは、フロウやライミングが発展した昨今のヒップホップに慣れた耳で聴くと物足りなく感じる部分もあるかもしれないが、しかし多くの人に届くものだろう。良い意味で優等生的なラップとなっており、そのイメージ作りに成功したからこそ、サクラップは嵐の楽曲の一部として定着していったのではないだろうか。

 もし、ヒップホップや日本語ラップは好きだが、櫻井のラップはちゃんと聴いたことがないという方がいたら、まずはポジティブなリリックに元気づけられる「Believe」や、メロディアスなトラックと叙情的なフロウが調和した「still…」、情景描写がリリカルな「素晴らしき世界」などを聴いてみてほしい。櫻井がラップに対し、真面目に向き合っているアーティストであることがきっと伝わるはずだ。

(文=松下博夫)
※記事初出時、情報に一部誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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