大橋純子にとっての“シティポップ”とは? デビュー40周年記念ライブを徹底レポート

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セットリストは「あの当時で一番弾けられるもの、ここの雰囲気に合ったものだけを集めた」とのこと。

「Welcome to Music Land」「Soul Trainまっしぐら」どちらも、歌唱・演奏ともにグルーヴィで、今日いわれるシティポップとはだいぶイメージが異なる。だが大橋は、『LIVE LIFE』にはシティポップにこだわって選んだ曲を収録したといっている。下北沢ロフトの初期を飾った金子マリ&バックスバニーなどにむしろ親しい印象だが、金子も場合によってはシティポップに括られていたりする。このあたり、よくわからないところだ。

 M3「クリスタル・シティー」は77年の同タイトルのアルバムからのシングルカット、M4「Smile Again」は79年のアルバム『Full House』収録曲である。このラインはシティポップといわれて無理なく納得できる。

 この2曲の間には、大ヒット曲「たそがれマイ・ラブ」(78年)があるが、もう一つの大ヒット「シルエット・ロマンス」(81年)ともどもスペシャルライブでは演奏されなかった(アルバムには収録されている)。どちらもタイアップで、楽曲自体もレコード会社主導で作られた面が強く、大橋—美乃家の本流とは別と見なされているためか。『LIVE LIFE』は基本的にオリジナルのイメージを損なわないアレンジで新録音されているのだけれど、「たそがれマイ・ラブ」は、アレンジも歌い方も、大きく変更されている。

 MCを挟んで、M5「眠れないダイアモンド」(88年)。4年間のブランクを経たアルバム『Def』からのシングルカットで、大橋いわく「バブリーで、きらめくようで、これぞシティポップ」、ただし「売れなかったけど(笑)」。オリジナルは打ち込みだが、ライブはもちろん生演奏であり、この曲に限らず生演奏への回帰が、大橋にとってある時期からの課題だったと語られた。『LIVE LIFE』は5日間で録音され、すべて一発録り(Live!)だったそうだ。

 M6は「鍵はかえして!」(74年)。デビュー曲だしオリジナルのままにしておこうかとも思ったけれど、曲も歌い手と一緒に成長するものだからあえて現在にあわせた姿にしたと大橋が話して、演奏が始まった。ところがここでトラブル! 電源が落ち、照明が消えてしまったのである。ステージにも動揺が走ったようで、演奏を続けるべきか戸惑って音数が減ったが、次第に持ち直してともあれ完走した。

「いいライブのアレンジになっちゃった!(笑)」といった後、大橋は、過去に野外コンサートで完全に電源が落ちるトラブルに遭ったエピソードを披露。「やめるわけにはいかないからドラムと歌だけで続けて。でも、マイクが入らないから生歌で(笑)」とアクシデントを笑いで回収してしまったあたり、さすがの貫禄だった。

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記者会見では「50周年も目指す」と宣言する一幕も。

 そして「ここからバーンと行くわよ!」と、代表曲だと自負する「シンプル・ラブ」(77年)から「サファリ・ナイト」(78年)へのメドレー。「サファリ・ナイト」ではお客さんたちも歳を忘れて(?笑)拳を振り上げていた。続けてアップテンポで畳み掛けるように、セカンドシングルの「ペイパー・ムーン」(76年)へ。大橋には珍しい、松本隆—筒美京平コンビによる楽曲で、オリジナルのイメージは残しつつ、かなり渋めにリメイクされていた。

 最後の曲は、『LIVE LIFE』中、唯一の新曲で、人前で演奏するのも初めてだという「Rainbow」。「7人のメンバーを虹の7色に置き換え、友情や絆を表現」した曲だ。キャリアに裏打ちされた自信がなければ、ちょっと怖くて演れないんじゃないかというほどシンプルなバラードである。

 アンコールでは、電源トラブルで不完全に終わってしまった「鍵はかえして!」を再び。大橋がその場で独断で決めたようで、慌てて譜面を繰るメンバーたちに「だって、デビュー曲だから」。今度は無事に演奏が終わり、スペシャルライブは幕となった。

 ……なるはずだったのだが、拍手が止まず、2度目のアンコールへ。大橋がアンコールの定番にしているというキャロル・キング「You've got a friend」のカバーで、スペシャルライブは本当に幕を閉じた。

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