WEAVERが振り返る、音作りに賭けた5年の日々「楽器の満ち引きのような面白さを出したい」

「理想としていた音にやっと出会えた」(河邉)

――セルフプロデュース作となった2013年のアルバム『Handmade』以降について伺います。「Free will」では、ハッとするコーラスパートのような、ネタの大きな使い方がアレンジ面での成長を感じます。

杉本:亀田さんプロデュースからの2-3年で、楽曲に対する必然性という考え方を自分たちの中に落としこむことができました。もちろん試行錯誤はしましたけど、自然にこのアレンジの方向に向かえました。

奥野:「Free will」はアルバム候補曲としては最後の方に収録が決まりました。「原点に立ち返って3人のサウンドを出すんだ」とこだわりぬく部分は、「偽善者の声」や「Shall we dance」などで出せていたので、わりと自由な発想で挑戦できています。

――「Shall we dance」は奥野さんの作曲です。奥野さんの曲は、クレジットを見なければわからないくらい自然に、杉本さんの楽曲と馴染んでいますが、ある程度杉本さんの楽曲を意識して作りますか?

奥野:もちろん意識します。曲を作るときに一番考えることは、世界観やメロディに、WEAVERの曲として杉本が歌って違和感がないことです。この曲は、ピアノトリオとしてライブで盛り上がれる曲を、ということを考えて作りました。ピアノバンドとしての力を見せるためにピアノリフから始まって、広がりのあるサビがあって、という意味では「トキドキセカイ」のような存在を意識しました。

――河邉さんは全ての作詞を手がけていますが、「曲も書いてみよう」という思いは?

河邉:2人が素晴らしい曲を書くので、いつか自分も曲を作れるようになったら面白いですね。

杉本:WEAVERの特徴は、河邉が全曲歌詞を書いていることで、創作の中心を3人ともがこれだけバランスよくできるバンドはなかなかいないと思います。普通は一人の人が作詞作曲をして、その人の世界観になります。これは僕の作曲にとっても大きな要素で、もちろん自分がやりたいことも大事にしますが、河邉の歌詞の世界観も考えます。それは多分奥野も同じように持っているイメージだと思います。2人の曲の親和性が高いのには、そういう部分もあるんじゃないでしょうか。ひとりひとりの強さはこれからも大事にしたいです。

――逆に、お二人は歌詞をまったく決めずに曲を書くのですか?

杉本:楽曲のイメージは何となく伝えますけど、具体的な言葉はキーワード程度です。

河邉:曲を聴けばだいたいわかりますけど、イメージを直接言ってもらうこともあります。僕自身が実際にマイクの前で歌うわけではないから、歌いやすい言葉を気をつけて考えるし、杉本も歌ってみてから意見をくれます。痛みも伴うけれど面白い作業です。

――技術的に、歌いやすさや響き方で一番気をつけている部分は何ですか?

河邉:もちろん母音の響きなどは気にしますけど、歌詞を書くときに一番怖いのはサビの頭の言葉です。その一語が曲の印象を左右します。普通に音楽を聴くときにもサビに入るときに「どんな言葉が来るんだろう?」と一瞬緊張します。そこをキャッチーでナチュラルなものにするのは一生の課題だと思います。

――メロディと歌詞の関係やアレンジなど、3人はかなり密にコミュニケーションを取りながらひとつの楽曲を作っていくのですね?

河邉:だんだん密にはなってきていると思います。最初の頃はそれぞれがそれぞれの仕事をするようなところがありましたが、最近はどんな曲を作るときにもメロディや歌詞のことについて話し合うようになりました。

杉本:3人の考え方も柔軟になってきている気がします。昔は自分のイメージを強く持ちすぎていて、河邉にそれを強要する部分がどうしてもありましたけど、いろんな楽曲を作ってきた中で、ボーカルからは出てこないような音や歌詞のハマり方があることを感じるようになりました。最近は特に柔軟に考えるよう気をつけながら作業しています。

――先行シングルでもある最新曲「こっちを向いてよ」のシンプルなアレンジからも、各パートや構成が楽曲の求めるイメージや互いの活かし方を考えて作られていることは伺えます。その中で逆に「ここはどうしても引けない」というような、みなさんそれぞれの音楽性の核はどこにあると思いますか。

河邉:僕はそういう意味で、デビュー当初は自分の核がなかったような気がしますが、経験を積むことで「良い音」というものをすごく考えるようになりました。自分のドラムスタイルについて、強さもありながら柔らかさとふくらみのある音を出したいと、ずっと考えていました。その結果が「こっちを向いてよ」「夢を繋いで」に表れていて、特に「夢を繋いで」は、理想としていた音にやっと出会えたような感覚があります。

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