笑顔でネガティブな気持ちを歌うアイドル いずこねこの「終わらせ方」を読む

いずこねこ&ライムベリー - BluE

現代音楽にアイドルポップスを組み合わせた独特のサウンド

 いずこねことは、大阪在住の「茉里」1人によるユニット名のこと。プロデューサーのサクライケンタが楽曲制作及びデザインの方向性など全てのコンセプト設定を行っている。

 いずこねこの魅力は、まず第一に音楽性が独特であること。ジョン・ケージやスティーブ・ライヒなど現代クラシックのいちジャンルである「現代音楽」にアイドルポップスを組み合わせたというサウンドは、オリジナリティに溢れている。「現代音楽POP」と名づけられたその楽曲群のコード進行は複雑で、一聴して耳に残る。また、様々な曲で「にゃんにゃん」という合いの手が入れ込まれているのも面白い。「nostalgi el」という曲では「いずこMIX」といういずこねこ独特のMIXが予め曲中に盛り込まれている(※MIX…曲中にファンが叫ぶお決まりの合いの手のようなもの)。

退廃的な世界観と、明るく可愛い茉里本人とのギャップ

 第二に、世界観が退廃的で陰鬱であること。「rainy irony」という曲には「辛いから前を向かない 夢も追いかけてないの 願えば叶うなんてこともないの 行き止まりよ」、「BluE」という曲には「このまま何も変わらずに生きてくの たったひとつの想い 悲しい結末だけを願っていた 終る 終る 一瞬の夢が終るよ」という歌詞がある。アーティスト写真なども、常に廃墟か、それに類する場所で撮られている。こうした世界観が一貫されていることで、明るくポジティブなイメージの多いアイドルシーンにおいて、目立つことができている。

 そして第三に、その独特なサウンドやアンニュイな世界観を、笑顔の茉里が歌い、ステージ上を飛び跳ねてエネルギッシュにパフォーマンスしていること。この違和感が、あらゆる長所を何倍にも魅力的に見せている。ギャップがそれぞれの良いところを最大限に引き出し合っているのだ。ネガティブな気持ちを笑顔の茉里が汗だくで歌うことで、まるで救われたような気持ちにさせられる。サクライ自身が言ってるように、まさに「(いずこねこは)茉里ちゃんとプロデューサーの僕との化学反応でしか作れないもの」なのだ。さらに加えるなら、高い歌唱力からは想像もつかないほど、普段のトークが柔らかい関西弁で"ふにゃふにゃ"としているところもポイント。MCや物販での接触でやられるファンは数多し。これもギャップの魅力のひとつだろう。そして最後に、というか書くまでもないことだが、見た目が可愛い。完全に可愛い…!

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