3D映像と生演奏がシンクロ 『フラッシュバックメモリーズ4D』が示したライブ表現の最前線

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3Dドキュメンタリー映像のライブシーンに合わせて、生演奏を披露するGOMA & The Jungle Rhythm Section。

 インディペンデント映画ながら国内で2万5千人を動員した音楽ドキュメンタリー『フラッシュバックメモリーズ3D』の上映に合わせ、出演するGOMA & The Jungle Rhythm Sectionが生演奏を披露するイベント『フラッシュバックメモリーズ4D』が、4月15日に渋谷WWWにて行われた。

 『フラッシュバックメモリーズ3D』は、交通事故によってMTBI(軽度外傷性脳損傷)と診断され、過去の記憶を失ったディジュリドゥアーティストのGOMAが、未来を信じて奇跡的な復活を遂げる姿を、3D映像によるレイヤー表現で捉えた異色の音楽ドキュメンタリーだ。GOMAの「過去の記憶」の映像をバックに、「現在の演奏」の3D映像を重ねることによって、観るものにフラッシュバックを追体験させるような作風は、映像表現の新たな可能性を示唆するものだった。本作を手がけた松江哲明監督は公式サイトにて「ドキュメンタリーは『現在』しか記録することができない。そこが劇映画と決定的に違う点だ。GOMAは交通事故に遭ってから多くの過去を無くし、新しい記憶を維持することさえ困難となった。現に彼は本作の撮影時のことを覚えていない。今を生きる彼をドキュメンタリーの手法で撮影することは必然だったが、彼が無くした過去も『現在』として同時に表現しなければいけない、と僕は考えた。そのためには3Dをパーソナルな表現として捉え、立体感や奥行きをレイヤーとして認識する必要があった」と、映画を3Dで表現した意図を解説している。今回のイベントは、作中の演奏に合わせて実際にバンドが生演奏を披露することにより、過去、映画撮影時の演奏、そしてリアルタイムの演奏という3重構造のパフォーマンスを実現しようという意欲的な試みとなっている。

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この日の3D映像は、通常の映画館よりも“飛び出す”設定になっていたとのことだ。

 会場となった渋谷WWWは、実際に作中のライブを撮影したライブハウスで、当日は400人を越える観客が集い満員に。映画の開始とともにメンバーがステージに上がると会場からは大きな拍手が起こった。劇中でライブが始まると、メンバーもそれとシンクロして演奏を開始する。GOMA & The Jungle Rhythm Sectionは、ドラム、パーカッション×2、そして世界最古の木管楽器であるディジュリドゥという、リズムとグルーヴに特化した編成のバンドで、躍動感溢れるポリリズムとディジュリドゥならではの“曲がる”サウンドが最大の特徴。「もっとも踊れるブッ飛びグルーヴバンド」とも称され、2000年代中頃の野外フェス、パーティー、クラブイベントでは引っ張りだこのバンドだった。GOMAが会場全体のグルーヴを操るように両手を舞わせ、ステージ中央に据えられた大型のディジュリドゥに息を吹き込むと、うねりのある低音が会場に鳴り響く。同時に、スクリーン上のGOMAも演奏を始める。立体的に飛び出たディジュリドゥの先端が、目の前まで迫ってくる。時には実際に演奏しているメンバーよりも、映像の方を近くに感じることもあり、空間の認識が歪む。立体映像と生演奏のシンクロによる圧倒的な迫力は、繰り返される複雑なリズムと相まって、会場に高揚感と陶酔感をもたらす。

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