クラウドファンディングでアルバム制作  DJ HASEBEが見出した新しい創作スタイルとは?

「クラウドファンディングのメリットは原盤権/出版権を自ら持つことができる点」

――実際にクラウドファンディングを利用してみてどうでしたか?

DJ HASEBE:僕自身、利用したことがないサービスだったので、とにかく手探り状態でした。(資金調達の)目標額は制作費などから逆算して算出することができますが、支援金と支援者へのリターン(※資金提供者のみに与えられる見返り)の設定は本当に難しかったです。

 ちょうどゴールデンウィークにBillboard Live Tokyoでイベントをするタイミングも重なったので、当日のミート&グリートを15,000円に設定(即日完売)したり、僕がアルバム制作などで使用しているPioneerのヘッドホンやイヤホンとのセット支援も30,000円~40,000円とやや高額に設定したんですが、ありがたいことに完売しました。うれしい反面、完売したとしても「新たにリターンを追加する」というわけにいかないんですよね。やはり最初に支援してくれた方々と公平さを保たなくてはいけないので。

 ちょうど支援金が50パーセントを達成したときに、さらなる盛り上げ企画として、インスト・アルバムの中から1曲を選んで、Sugar Soulのボーカルを追加した楽曲を制作し、支援者全員にダウンロード・プレゼントする、という追加特典を発表しました。これは目標支援額に達成した場合のみの企画ですが、Sugar Soulと2人だけで楽曲制作をするのは、約15年ぶりとなるので、ぜひとも実現させたいと思っています。あとはデッドストックで所持していた僕のコンピレーションCD『Coolin' Vox』を7,000円以上支援していただいたサポーターの方全員に寄与することにしました。

 可能なアイディアは詰め込みながらプロジェクトを進めてきていますが、なにより企画の主軸はニュー・アルバムの制作なので、そこに注目してほしい。このプロジェクトで制作したCDは、支援者にだけ送られる仕組みです。今はフィジカル(※CDやDVDなどのパッケージメディア)の売り上げが低迷していますが、Makuakeのような新しいサービスを通して、形あるものを聴き手に届けられるのはうれしいし、支援者の方々の名前がブックレットにクレジットされる(3,000円以上の支援をしたリターン)ことで、支援者自身がアルバムの企画者の一員だと思ってもらえれば、なおうれしいです。

――アルバムはどのような内容になりそうですか?

DJ HASEBE:ニューディスコや、昨今のブームでもあるディスコ・ブギーのリエディットの雰囲気を活かした作品にしたいと思っています。これまでのヒップホップやR&Bの制作で培ってきたサンプリングの手法をアップデートさせ、自分らしく再構築することで面白いものが出来上がると確信しています。

 なによりクラウドファンディングのメリットは原盤権/出版権を自ら持つことができる点です。支援者へのリターン後は、海外でのデジタルリリースも視野に入れています。世界水準のダンスミュージックに仕上がると思うので、楽しみにしていてください。

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