坂本龍一が「電子音楽」の歴史を紐解く――「テルミンやシンセはテクノロジーの側から与えられた」

 電気と音を結びつけたテルミンの手を触れないという演奏方法や、これまでになかった音色はヨーロッパやアメリカで大きな話題を呼んだ。演奏方法の難しさから一般まで普及はしなかったものの、電子楽器の開発はその後の研究者たちに引き継がれていく。そしてその後生まれたのがオンド・マルトノ。原理はテルミンと同じだが、鍵盤を取り入れるなど、従来の楽器の操作性を取り入れより幅広い演奏が出来る楽器である。鍵盤が自由に揺れることで自在にビブラートがかけられるという、見た目は鍵盤楽器だが、本質は弦楽器に近いというオンド・マルトノは、鍵盤を弾くだけではなく、左手でボタンを押さないと音が出ない(弦楽器で言う弓のような役割)ことで、多様な演奏を実現する。そしてスピーカーにはドラが入っていて、ドラに併設されたスピーカーに共鳴して音が変わったりもする。電気によって出せる限られた音を、豊かに響かせる装置が幾重にも仕掛けられているのだ。こちらも、スタジオで坂本と学生たちがオンド・マルトノ奏者の大矢素子とともに演奏を体験した。

 テルミンやオンド・マルトノの発明は、のちのシンセサイザーにも繋がっていく。三輪は「テルミンやオンド・マルトノは楽器自体としては凄い発明だが、それは作曲家や音楽家が自分の音楽性を拡張しようとして得たものではなく、むしろ技術、テクノロジーの側から与えられたものだというところに意味がある」という。坂本は現代の技術と表現者の関係についても「プラグイン(コンピューターの機能を拡張させるソフト)なんかはどんどん開発されていって、それを表現者がつまみ食いしながら試していってるような状況なので、もしかしたらこの時代と今はとても似ているのかも」と解析し、このような時代にどうやって表現者でいられるのかというのは難しい問題だとして、今回の放送を結論づけた。

 「スコラ 坂本龍一 音楽の学校」第2回は、1月16日午後11時25分から放送予定。
(文=椎名ゆい)

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