ストリート発ミュージシャンの系譜 その最前線に踊り出たUSAGIとは何者か?

 そんなブームの中、ゆず、19に続く「第三のネオ・フォークデュオ」という触れ込みで登場したのがコブクロだ。大阪を拠点としていたため遅咲きのデビューとされたが、路上で鍛え上げた歌唱力と楽曲の完成度は群を抜いていた。ファーストシングル「YELL〜エール〜/Bell」(2001年)はオリコン4位を獲得。その後も数々の名曲を世に送り出し、紅白歌合戦には2005年から(治療・療養中だった2011年を除いて)毎年出場する常連となっている。同時期にデビューしたフォーク系ミュージシャンの多くが今では活動休止や解散となっているが、コブクロというひとつの完成形の登場がブームに一区切りをつけたのは想像に難くない。その後ストリートではいきものがかりに代表されるバンド系が主流を占めるようになり、フォークの弾き語りを目にすることは少なくなった。

 しかし、そんなフォーク系ストリートミュージシャン界に新星が現れた。2014年の1月29日にシングル「イマジン」でデビューを飾るUSAGIである。デビュー前にも関わらず「ミュージックドラゴン」や「中西哲生のクロノス」など全国のテレビ・ラジオでパワープレイを獲得、その数なんと50にも及ぶ。メジャーデビュー前の新人としては異例なことだ。これだけメディアの注目を集める理由、そのひとつはメンバーの杉山勝彦がすでに超売れっ子の作曲家であったことにある。杉山はこれまで嵐や中島美嘉、前田敦子や板野友美などに楽曲を提供。乃木坂46に提供した「制服のマネキン」と「君の名は希望」がオリコン1位を獲得したこともある、知る人ぞ知る職業作家であった。そんな彼が偶然新宿の路上で歌声を聞き一目惚れ、それまでの作家活動を投げ打ってまでデュオを組もうと思った相手が上田和寛だ。ロックバンドを活動休止後ストリートライブを始め、2012年12月にはZepp Nambaで単独ライブを行い1075人の観客を虜にした上田。彼の全身全霊を込めた情熱的な歌声は歩く人々の動きを止め、杉山もまた彼の声に魅了されたひとり。意気投合した二人はフォークデュオとして活動を開始した。

USAGI - イマジン

 今回リリースされる「イマジン」はUSAGI活動前の4年前から杉山が温めていた楽曲。夢を抱くことで人生を輝かせることができると歌う、今どき珍しいほどストレートなメッセージソングだ。壮大なストリングスによってアレンジされた楽曲の上に響く、人間味あふれる上田の熱唱にはリスナーの心を掴むものがある。脈々と続いてきたストリートミュージシャンの系譜を受け継ぎながらも、売れっ子作曲家・杉山の才能とシンガー上田の才能が融合することで、幅広い世代に訴求するポップ性も実現している。彼らが新たなシーンを切り開いていくのか、USAGIの今後の活躍に注目である。
(文=北濱信哉)

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