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ビヨンセが世界の音楽ビジネスを変える――事前告知なしで新作発売の狙いとは?

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iTunesの「iTunes this week」でも大きく扱われた『Beyonce』

 12月13日(金)日本時間の午後14時、アメリカ時間でちょうど日付が変わった瞬間に音楽ファンが驚く出来事が起こりました。世界でもっとも支持を集めるR&Bシンガーのビヨンセが、なんの前触れもなく突然ニュー・アルバム『Beyonce』をiTunes Store独占で世界同時発売したのです。

 この“サプライズ・リリース”は、SNSやブログ系ニュース・サイトを中心にインターネットを爆発的に盛り上げ、まったく費用をかけずにマーケティング/宣伝することを狙っています。またiTunes Storeがアメリカで一番の音楽小売業者になったことで、最大公約数のユーザーへの販売方法としても無駄がなく、さらにアップル社に絞った箝口令を敷くことができたからこそ実現した企画なのです。

 注目の新人として話題を集めたR&Bシンガー、フランク・オーシャンが昨年7月に発表したデビュー・アルバム『Channel ORANGE』でも行われた戦略で、このときもデジタル配信の売り上げのみで全米ビルボード・チャートで初登場2位を獲得。さらにはグラミー賞まで受賞しましたが、今回のビヨンセは常にパパラッチにも狙われているビッグ・アーティストの仕込みですから、並大抵なプランでなかったことは想できます。日本でいうワイドショーや写真週刊誌にあたる「TMZ」という有名ゴシップ・サイトのカメラマンにまで契約して秘密を守らせた徹底ぶりだったそうですからね。
 
 今回の『Beyonce』は発売からわずか3時間で8万を超えるダウンロードを記録。1週間の売り上げが10万枚程度でも全米1位になれる時代ですから、その瞬間最大数はまさに賞賛に値します(ビヨンセの発売週12月12日付の全米アルバム・チャート1位はガース・ブルックス「Blame It All on My Roots:Five Decades of Influences」で14万6千枚)。

 その他のメリットとしては、深刻化し続ける事前流出問題への対策であったり、他アーティストの発売日とは別の曜日に設定することで競合を避け、話題を集中させることが挙げられます。全世界のiTunes Storeでサイトジャックが行われたのも初めて見た規模でした。

 しかし、この戦略は小売店や他の配信業者からの反発はあるだろうし、CDのような形あるモノでのリリースを望む声も少なくないでしょう。最大の論点はここにあります。配信のみのリリースでは、しばしばインターネット上で音質の問題が議論となりますが、圧縮しない音楽フォーマットが正義で、MP3のような音源は悪だとされる論調よりも、圧縮したファイルの音質を新しい技術で良くしていくという方向で考えた方が、より建設的ではないでしょうか。今回のビヨンセはもともとのレコーディングも最高峰のシステムで行われているだろうし、「Mastered For iTunes」という専用のマスタリング技術を採用しています。一般の音楽リスナーが耳にするには十二分の音質だといって間違いありません。さらに驚くべきことにアルバム全14曲すべてのミュージック・ビデオ(+α)まで収録。歌詞以外はブックレットも付いてくるので、デジタル・リリース形態としても、これ以上ない完璧な内容。現行の音楽作品として考えられる最大限が詰まっているのです。

     
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