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ドレスコーズ『More Pricks Than Kicks TOUR』レポート

「ロックンロールは悲しみと踊る」ドレスコーズがライブで見せた新境地

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20131309-dress-01.jpg新アルバム『バンド・デシネ』に伴うツアーを行ったドレスコーズ。(撮影=松本時代)

 ドレスコーズの新しい幕開けの一夜だった。11月6日に発表されたセカンドアルバム『バンド・デシネ』を引っ提げ、全国9カ所を廻る『More Pricks Than Kicks TOUR』のファイナルが12月7日、渋谷AXで開催された。

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 舞台上はシンプルなバンドセットのみ。ふらっと現れ、派手なストロボとともに始まったオープニングナンバーは、『バンド・デシネ』収録の「どろぼう」。そして「ゴッホ」「Lolita」と立て続けにキラーチューンを演奏し、4人はあっと言う間に超満員の観客を釘付けにする。同世代のバンドの中でも明らかに一線を画す、古典的でストレートな轟音にフロアは揺れだすが、骨太なバンドサウンドで容赦なく飛ばすバンドメンバーを尻目に、志磨遼平(Vo)だけが少し緊張しているように見えたのが印象的だった。彼にとってこのステージは、迷いの中にあったこれまでのドレスコーズに本当の意味でケリをつける、大事なステージだったに違いない。

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 今年の7月に観たドレスコーズのライブは、良くも悪くも“乱暴”だった。その時の志磨の鬼気迫る表情はよく覚えている。ドレスコーズはもともと音楽的スキルの高いプレイヤーが揃ったバンドでありながら、「元毛皮のマリーズがやってるバンド」からどこか完全に脱けきれない焦燥感、あるいはフロントマンである志磨の3人に対する遠慮が隠しきれていなかったように思えた。だが、対バンツアー、そして数々のフェス出演を経て、その遠慮を吹っ切った志磨が自身のエゴをバンドにぶち込み、それをバンドが見事に化学反応させた傑作『バンド・デシネ』を完成させた中で、真の意味で志磨はバンドの1/4になったのかもしれない。その集大成となった今回のツアーファイナルは、ドレスコーズの模索と実験の終わり、そして新しい始まりを告げるものになったのだ。

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 「リリー・アン」で会場をハネさせたあと、中盤では一転、フォーキーな「Silly Song,Million Light」、ノスタルジックな「シネマ・シネマ・シネマ」でバンドのアナログな独自性を存分に味わせながら、「We Are」でさらに会場を揺らした。ステージが進むにつれて志磨の気負い感も払拭され、観客を煽りながら、躍動的なボーカルを聴かせていく。また、ダイナミックで華のあるプレイが一際目立つ菅大智(Dr)の存在感も大きい。メンバー同士のぶつかり合いが躍動感のある演奏を生み、フロア全体を飲み込んでいく。

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 本編終盤、「君たちがダンスを踊る相手は誰? 僕じゃないよ。ダンスの相手は君の悲しみだ。ロックンロールは悲しみと踊れるようにしてくれたんだよ。さあ、踊ろう! 渋谷!」というメッセージを志磨が発し歌った「(This Is Not A)Sad Song」、そして鳥肌が立つような一体感を会場にもたらした「トートロジー」での熱量は感動的なまでだった。フロアに飛び込み担ぎ上げられた志磨が「これがロックンロール、わかんないやつは全員くたばれ!」と叫び、会場全体とともに拳を上げる姿はまさに圧巻としか言い様がない。

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 さらにアンコール1曲目の「Automatic Punk」では破壊衝動を爆発させ、2曲目に演奏されたデビューシングル「Trash」では「ドレスコーズのクズ担当です、人間のクズです、クズでごめんよー!」と叫んでまたフロアにダイブした志磨。自らを「本当は誰よりも傲慢で、わがままで、扱いづらい人間」と語る志磨はバンドとして、今きっと最も幸せな時間を迎えていても、肯定されることへの渇望は尽きることがないのだろう。不確かなものを求め続けることこそがロックンロールであり、その喜びと悲しみを背負うことを決めたのであろう今のドレスコーズは、数少ない“本物”のロックンロールバンドそのものなのだと、改めて実感させられるラストだったのだ。

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 今の時代らしいバンドではないかもしれない。しかし「全部手に入れたい」とのたうち回りながら、自分はここだと叫ぶドレスコーズの姿は、この日、会場にいた全ての人の心をも捉えたはずだ。覚悟を決めた彼らの勝負はようやく今、これから。もう次のステージが楽しみで仕方ない。
(文=岡野里衣子)

20131309-dress-08.jpgライブ終盤、フロアに飛び込む志磨遼平。会場はこの日一番の盛り上がりを見せた。

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