「本当はスタジオと同じ音で聴いてほしい」鈴木慶一が“音楽と音質の関係”を語る

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No Lie-Senseは、2013年11月にKERAと結成した音楽ユニット。ファーストアルバムの『First Suicide Note』(ナゴムレコード)は、ハイレゾ配信も行っている。

――ああ……個人の好き嫌いも、そこには入ってくるわけで。

鈴木:そう、こっそり入って来るんだよ。俺はハイハットが右にあるのはイヤだとか(笑)。で、それを左に直したら、意外としっくり来たりして。要するに、音の定位っていうのは、本当に相対的なものなので、絶対的なものではないんですよね。私はエンジニアじゃないので、そこはお任せしますというか、他人がやることによって、すごく良くなる場合もあるわけで。

――第三者が入ることによって、音の着地点が見える?

鈴木:そうですね。そのためのマスタリング、そのためのエンジニアだったりするわけだからね。

クオリティの高い音とそうでない音を混ぜると、どちらも目立つ

鈴木:音楽が面白いのは、エンジニアリングも含めて、すごく小さいことの積み重ねだっていうことなんだよね。たとえば、ギターの音を良くするには、コイルの巻き方だったり、電気的なケーブルのことだったりを、ちょっとずつレベルアップして音を良くしていくわけで。あと、普通のスタジオに行けば、超高額なケーブルがはわされているわけだよね。で、電気も一回きれいにするとか。そうやって細かい積み重ねでクオリティを上げていく。だから、よく言うよね、20万のスピーカーを使っていても、プレイヤーが5000円では意味が無いって。

――言いますね。

鈴木:やっぱり、電流が通るところを、全部同じように上げていかないとダメなんだよね。まあ、そういうことばっかり言ってると、『普通の人には、わからないんじゃないですか?』って言われたりもするんだけど(笑)。とはいえ、クオリティの高いものを出したいという気持ちは、ちょっと譲れないんだよね。たとえ普通の人が聴いてもわからないことだったとしても、そこはちょっと俺、わかるから(笑)。

――鈴木さんは、5.1chサラウンド録音をはじめ、新しいことを率先してやっているイメージがありますが、そのスタンスは今後も続いていきそうですか?

鈴木:そういうものが出たらね。レコーダーとしてのデジタルに移行するのがちょっと早すぎて、いろいろひどい目にあったりとかしてるけど(笑)。でも、テクノロジーっていうのは、非常に重要なものだとは思っているので。まあ、いまだに敢えてテープで録るとか、カセットで録るとか、そういうのもやっているんだけど。

――そこがすごいですよね。

鈴木:まあ、そこは相対的なものなので。クオリティの高い音とそうでない音を混ぜると、どちらも目立つんだよね。全部きれいな音にしていくと、なんかのっぺりしていくっていうか。あと、シンセサイザーの会社とかプラグインの会社も、全部同じものにしちゃうと、なんか同じに音になっていくから、違う会社のものを混ぜたりとかして。

――いろいろな音を混ぜることが大事であると。

鈴木:うん、そうなっちゃうよね。過去のものでも、すごい良い音のする機材があったりするから。私はそこまで持ってないけど、ミュージシャンはみんな、昔の良いマイクを持っていたりするよね。機材に詳しい人も多いし。そう、昔は自分が作った音楽を、誰かに録音してもらって、それで済んでいたけど、いまは自分でやったりもするわけで。そうなると、エンジニア的な知識も必要になってくるというか……音楽を作るよりも、そっちの時間が増えてくる(笑)。

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