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トレモロイド・小林郁太が人気ミュージシャンの楽曲を徹底分析

中田ヤスタカはいかにしてエレクトロとJPOPを融合したか “緻密な展開力”と“遊び心”を分析

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 東京を拠点に活動するバンド、トレモロイドのシンセサイザー・小林郁太氏が、人気ミュージシャンの楽曲がどのように作られているかを分析する当コラム。反響の大きかったaiko、桑田佳祐に続き、今回は日本のJPOPシーンに大きな変化をもたらした音楽プロデューサー・中田ヤスタカの楽曲の“仕組み”に迫る。(編集部)

参考1:aikoのメロディはなぜ心に残る? ミュージシャンが楽曲の“仕組み”をズバリ分析
参考2:サザン桑田佳祐の名曲はなぜ切ない? ミュージシャンが"歌う和音"と"シンコペーション"を分析

 きゃりーぱみゅぱみゅPerfumeのプロデューサーとして知られる中田ヤスタカさんは、キャッチーでありながら質の高いエレクトロポップで、今日本でもっとも旬なミュージシャンの一人です。今日は彼自身のエレクトロユニットCAPSULEも含めて「中田ヤスタカのポップス」というものがどういうものなのか迫ってみます。

「ファッションモンスター」の展開がめまぐるしいことの意味

 中田さんの楽曲の特徴は「よく動く」ということと「セクションごとの意図が明確」ということにあります。つまりとてもはっきりした曲を作ります。まずはその極地とも言えるきゃりーぱみゅぱみゅの「ファッションモンスター」を1コーラス見てみましょう。

 導入部分はきゃりーぱみゅぱみゅの楽曲らしく、「ファッションモンスター」というテーマの連呼から曲が始まります。コードはFとFmを繰り返します。同じ和音を半音移動するのはとても不安定で緊張感を促します。昔のハリウッド映画の緊迫したシーンに使われていましたね。そしてそこから突然、「Db7 Ab onC Bbm7 Fm」というドポップなコード進行の、ハイテンションでドラマチックなイントロが唐突に訪れます。と思ったらその流れは一度切って、Aメロは転調したような錯覚を与える掴み所のない展開です。その後一瞬のキメからサビにいきます。冒頭と同じように「ファッションモンスター」の連呼なのですが、コード展開を含めトラックはイントロの「Db7 AbonC Bbm7 Fm(Ab)」です。

 ご覧の通り「せわしない」というくらいに展開がめまぐるしく、それぞれセクションの雰囲気が全く違います。しかし、なぜそのような構造になっているのかを考えながら見ていくと、この曲はとても緻密に作られていることがわかります。まず、冒頭の「モンスターセクション」です。いくら歌から入っていても、これはポップアイコンの曲の冒頭とはとても思えませんね。まずここでリスナーは裏切られ、「ポップな曲じゃないのかな?」という気になります。ところがイントロに入ると一転して、ものすごくポップな進行になります。何やら泣かせるシンセギターフレーズがDaft Punk的で、過剰なまでに感動的です。ここで「冒頭のおどろおどろしい雰囲気はこのイントロのための前振りだったのか!」と気がつきます。Aメロではまたもガラリと雰囲気が変わって、何となく不安定な様子になります。しかしこのセクションではヴォーカルが裏拍(『ドン ドン ドン ドン』に対して『ンド ンド ンド ンド』の位置)に入っているので、跳ねるような推進力があり、何だかよくわからないながらも、曲はどんどん前に進んでいきます。

 一瞬のブレイクが「さぁサビだよ!」という気配を見せていよいよサビに行くのですが、歌い出しは「モンスターセクション」の「ファッションモンスター」の連呼でありながら、トラックは「感動イントロ」のものです。実に見事な構造で、この2つを混ぜることで、冒頭からのめまぐるしい展開にカチリと必然性が生まれ、意識的に聴いていなくてもリスナーの耳は「そういうことだったのか!」という解決感を得ます。「ポップな快感」を定義する良い例でしょう。Aメロが前の2つのセクションを全く引き継がない進行だったのは、一旦この2つを忘れさせる役割を果たすため、とも言えます。素晴らしいのはイントロのシンセギター的なフレーズが、サビで鳴らすと「ファッションモンスター」という歌詞の「モンスター」のオブリガード(主旋律を引き立てるためのフレーズ)の役割も果たしていることです。

     
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