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石井恵梨子が「音楽界のコトバ」を考察  第3回:ロックバンドのMC

最近の若手ロックバンドは、なぜ敬語でMCをするようになったのか?

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石井恵梨子
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 今最も人気と勢いのあるロックバンドのひとつ、ONE OK ROCK。彼らが昨年1月に行った横浜アリーナ公演で、とても不思議な感覚に襲われた。詰めかけた満員の観客、その眼差しを一心に浴びるTakaは、もはや貫禄あるロックスターのたたずまい。しかし彼は「精一杯やらせていただきます!」「思いきり声出してみてください!」と、終始敬語のMCをするのである。

 最初は、最近の若者の敬語が変だという論調で片付く話かと思っていた。一部のサービス業で飛び交う「お客様のお名前様は◯◯でよろしかったでしょうか」のように、過剰なうえに間違った敬語の使い方は、なんの敬意も感じられないどころか、むしろ笑えるネタになってしまう。ロックスターが自分のファンに敬語というのも、それ必要ないし、変じゃないっすか? というわけだ。

 実際、ミュージシャンに取材していて、変な敬語に出会うことは多い。特に面白いのは大手芸能プロダクションに所属している人たち。もちろん縦社会の芸能界でもしっかり生きていけるよう、先輩には必ず「さん付け」、先輩じゃなくても呼び捨て厳禁など、厳しく教育されているのだろう。だが、バンド名に「さん付け」って必要? イベンターやフェスの「さん付け」は絶対いらなくない? その違和感を特に感じる昨今だ。

 かつてミヒマルGTに取材したときの、過剰な敬語の嵐は忘れられない。完成したアルバムに対し「一曲一曲に時間をかけさせていただいたんで、こういう思い入れがありまして、それで、このタイトルを名付けさせていただきました」とヒロコ。え? 自分で作った作品じゃないの? なんで「させていただ」かなきゃいけないの? これはもう笑いの範疇に収めていいレベルだと思うが、彼女はあくまで「させていただき」を連発しながら話していた。このたびのニュースも「活動休止させていただく」となるのだろう。

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敬語のMCに敬語で答える観客も登場!?/写真:Michael Thomas

 冒頭の話に戻ると、その点、Takaの敬語は使い方自体が変というわけではない。自分やバンドメンバーのことは普通に話し、客に対して何かアクションを求めるときだけ「いただけますか」と丁寧語を使う。これは人として正しい言葉遣いであり、ファンにまず敬意を払っている、というアピールとしても有効。いよいよ大団円というラストにだけ「お前らを愛してるぞ!」と叫んでみせるのも、非常に効果的なタメ口の使い方だといえる。

 最初から高圧的に「お前らぁ」「声出せぇ」「ジャンプしてみろ」だったら、最後の「愛してるぞ」はここまで響かない。ずっと敬語だった彼が、ようやく本気で私たちを認めてくれた! ファンはそんな喜びさえ感じるのではないか。本人がどこまで計算しているかはわからないが、ワンオクの敬語とタメ口の使い分けは、今までのロックスターがやらなかったツンデレ方式である。

     
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