>  >  > 日本ロック界、英語MCはなぜ消えた?

石井恵梨子が「音楽界のコトバ」を考察  第4回:80年代ロッカーの英語MC

「オーライ!」「カモーン!」日本ロック界から英語MCが消えた背景とは?

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フェス
ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987
映画
石井恵梨子
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 映画『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987』を見た。

 当サイトのレビューで小野島大氏が書くように(参照)、なるほど、すさまじい映画である。屋根もないステージでずぶ濡れになるミュージシャンと傘一本で立ち尽くす観客の姿は、フェスに馴染んだ現在の音楽ファンにとって信じがたい光景に思えるだろう。当時の集中豪雨、その十年後にあたる97年の第一回フジロックの台風などを教訓にしながら、今日のフェスの快適性と安全性は確立されていったのだ。

 同じくらい信じがたいもの、そして歴史と共に消えていったものがある。アーティストの英語MCだ。豪雨に打たれ続ける7万2000人を相手に「オーライ!」「カモーン!」「オーケー!」を連発するシンガーのなんと多いことか。気力も体力も何もかもまったくオールライトじゃない状況だろうに、一曲歌い終われば「オーライッ!」。次の曲を紹介する時は「オーケー、カモーン!」。もちろん「負けるなよ」などと精一杯の励ましを口にするシーンは各人にあるが、やっぱり最後は「オーライ!」だ。もはや意味など感じられない。もう条件反射というか、それ以外はありえないという感じで英語のMCが飛び交っている。それが1987年のロック・コンサートだ。

 印象的なのは白井貴子のステージだ。ギターの音が出なくなるシーンで彼女は困惑気味に言う。「ソーリー、ギターがいかれちまったよ」。あらためて書くと、当時の白井は決してワルぶった不良性が売りではなく、特別トンがったセンスをアピールしていたわけでもない。あくまで普通のボーカリスト。ポップス/ニューミュージック好きの人間から見れば多少ロック寄りに聴こえる、という程度のポジションだ。その彼女でさえ「ソーリー」で「いかれちまった」である。なんだこれ。はっきり言って変だろう。

     
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