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さやわかの「プロデューサー列伝」 第5回:HIRO

EXILEの“成り上がり”を支える、リーダーHIROの物語プロデュース力

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 そしてこのストーリーの存在こそが、HIROという人間の際だった点なのだと思う。つまり彼は彼自身と”仲間”を、辛く苦しい物語の主人公として語ることで成功体験を美しく彩ってきた。いわば彼は自分自身を含めてEXILEを物語化するという意味においてプロデューサーだった。そして、その物語を生きる、演じるという意味でもパフォーマーであった。だからEXILEの楽曲にはHIRO以外に専属の、音楽的な意味でのプロデューサーがいて、楽曲的な部分は大枠として彼らに任されている。そして、HIROはもっとカラオケで歌いやすい曲を作るべきだと指示したり、ダンスオーディションやスクール運営なども含めて、ダンスパフォーマンスを中心とした成功物語へ向けて人びとの人生を物語化するというプロデュース活動を行っている。まあ、芸能事務所かレコード会社の社長業に近い。

 むろん音楽シーンの状況とHIROの動きに関連がないわけではない。HIROは89年にデビューしたZOOというダンスグループの一員であり、EXILEがその後継グループと目されることもあるこのグループは『Choo Choo TRAIN』のスマッシュヒットでオリコン3位となり、90年代のダンスブームにうまく乗っていた。しかしその後ブームが下火になると低迷し、95年には解散している。男性のR&Bやダンス系ミュージシャンが再度日の目を見るには、90年代後半の日本語ラップシーンの成熟や和製ディーヴァブームを経るまで待たねばならなかった。そういう音楽シーン側から見たようなことはいくらでも言える。が、そうした説明をしても、HIROのプロデューサーとしての才覚や立ち位置とは微妙にズレている。だから音楽シーンの言葉でHIROを語るのは難しいのだろう。

 EXILEは2003年にタイアップ攻勢を利かせたアルバムでチャート1位を記録するが、このやり方自体は実に90年代的なもので、特に新しさはなかった。そういった手法を採ること自体が、このグループの年期を感じさせる。しかし同じ年、EXILEはオリコン2位のロングヒット曲『Breezin’ 〜Together〜』を発売し、これはメンバーの自信につながっていた。そこにもやはり、「自分たちを信じて頑張る」というような浪花節の物語が差し挟まれている。これは何かに似ていると思えば、それはゼロ年代以降に台頭したグループアイドルの見せる、売れない下積み期間を経て、やっと大きな場所でライブをやり、ついにオリコンで上位になるという「感動の物語」と、ほとんど同じものだ。アイドルシーンでライブを中心に活動するアイドルが増え、そうした「感動の物語」が観客に求められるようになっていくのも2003年以降のことなのである。その意味でHIROの、というかEXILEのやり方は時代に寄り添っている。近年のEXILEはAKB48と何ら変わらない複数枚CD販売を行っているが、それもむべなるかなと言ったところである。

 結局、今の音楽チャート上位を席巻しているのは音楽の力よりも物語の力であり、プロデュースという役割には物語をうまく演出するという意味が含まれるようになった。その点でHIROは手練れである。HIROは自分たちの来し方行く末をしっかりと見据えて、それを熱くカッコいい物語にして売っている。ストーリーラインを把握している。突発的な行動に出たりもしない。だから、彼は今年4月の時点でパフォーマー引退を宣言したし、彼はそのストーリーをパフォーマンスしている。

■さやわか
ライター、物語評論家。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『朝日新聞』『ゲームラボ』などで連載中。単著に『僕たちのゲーム史』『AKB商法とは何だったのか』がある。Twitter

      

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