横山健が今の音楽業界とインディーズ・レーベルのあり方に切り込む (前編)

横山健が語る、これからのレーベル運営術「そもそもレコード会社なんてのは隙間産業なんだ」

PIZZA OF DEATH RECORDSの代表取締役社長も務める横山健

 90年代、Hi-STANDARDのギター・ボーカルとしてパンクブームを牽引した横山健。現在はBBQ CHICKENSやソロ名義のKen Yokoyamaとして活動をするだけではなく、PIZZA OF DEATH RECORDSの代表取締役社長として、若手バンドの発掘・育成にも力を入れている。今やインディーズ界のトップランナーとなった彼は、混迷する昨今の音楽シーンについてはどのように捉えているのだろうか。ロングインタビューの前編では、CDが売れない現状と、その中でのレコード会社が担う役割まで、ざっくばらんに語ってもらった。聞き手は、3年前にもレーベル運営について横山健に取材した経験を持つ、音楽ライターの石井恵梨子氏。(編集部)

――以前、音楽業界が危機的状況だ、我々はこの先がない斜陽の産業にいるんじゃないか、という話をしたのが2010年の夏でした。

横山:もう3年前なんだ。当時はほんと「このままCDが売れないと、我々の生業はどうなる!」とか思ってたけど。でも今、相変わらずいろいろ考えてはいるけど……意外とどうでもよくなっちゃったかなぁ(爆笑)。

――わはははは。

横山:今は「そもそもレコード会社なんてのは隙間産業じゃないか」って思うようになった。たとえばミュージシャンに音楽を制作する力があって、それをアルバムにする力、自分たちに流通させる力があれば、レコード会社っていらなくなるよね。音楽関係の仕事はそれだけじゃなくて、流通とか音楽出版とか雑誌とか、ほんといろいろあるけども。お客さんがニーズとして「これはいらない」って判断するんだったら、もうそれは淘汰されてしかるべきなんじゃないかな。これがポジティヴなのかネガティヴなのかわかんないけど、もう甘んじて受け入れてる。俺ひとりが考えても世の中の流れには抗えないぞ、と。

――悲しいけど、CDメディアがもう不要だという現実は明らかですよね。その中で足掻くミュージシャンのことは応援したいけど、これが今後さらに盛り上がって将来的に売れていくものではないと、誰もが気づいている。

横山:そう。ミュージシャンは「アルバムっていうのはアートワークがあって、パッケージされてナンボだから、それを手に取ってほしい」って言うし、その欲求はもちろん僕の中にもある。真っ先に僕が言い始めたんじゃないか、っていうぐらいの気持ちもあったんだけど。でも、そこらへんを情緒的に訴えかけてくのも……もう飽きて(爆笑)。

――飽きましたか!

横山:求められてないんだったら、もうしょうがない。そうやって肚が据わったのがここ3年くらいか。ビザオブデスとして日々新しいバンドを探すし、いろんなバンドと話もするけど、もう自分もCDをバンドのブランディングのためのツールとしか考えてないことに気づくの。本当は一番大切なものなんだけれど、今、現に大切にされてないから。そこを認識しなきゃいけない。バンドと話すときも「CD売れないから、まず」って話す自分がいるのね。「ピザオブデスから出したって、2000枚が2500枚になることはあるだろうけど、2000枚が5000枚にはならないから」って。

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