aikoのメロディはなぜ心に残る? ミュージシャンが楽曲の“仕組み”をズバリ分析

「ポップスでは通常、コードの構成音で歌い出します。すると、きれいで聞きやすくなる。ところが、aikoさんは構成音に含まれていない音で歌い出すことが多いのです。安定的なコードではメロディラインはコードから外れ、不安定なコードではコードに寄り添う傾向にあります。

 また、音階を階段状に上下することが多いのも大きな特徴。順番に音階が上がっていくので、ドンドン盛り上がっていく感じがする――という構成上の効果があります。さらに、不安定なコードだったり、コード外の音から歌い出したりしていても、階段がきちんと組まれていると『ちゃんときれいに聞こえる』という効果もあります。

 彼女はこのようにして、突飛なコードを使う場合はメロディの動きで中和することで違和感を覚えさせないように整え、使い古されたコードを使う場合はその上に一般的でないメロディを乗せて、“aiko的な歌”を作っているのです。

 『カブトムシ』は、特にそう。1度のメジャーコードというこれ以上ないほど普通のコードで始まっているのに、歌のメロディは2度から入っています。この他にも、これまで説明した工夫がすべて詰まっている楽曲です」

aiko『カブトムシ』(ポニーキャニオン)

 「夏の星座にぶらさがって」など独特な発想で綴られた歌詞も魅力のひとつであるaikoだが、メロディメイカーとしての実力もかなりのものと言えそうだ。
(文=編集部)

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